食生活を変えるなら、間食もお酒も揚げ物も、思いついたその日にまとめてやめたほうが早い。そんなふうに言われることがあります。中途半端に少しずつでは効果が出るまでに時間がかかるし、だらだら続けている間に元の食べ方に戻ってしまう、という理屈です。
たしかに、勢いのある最初の数日は苦になりません。問題は、そのあとです。1週間もすると無性に甘いものが食べたくなり、我慢の反動で以前より食べてしまい、「やっぱり自分には無理だった」と結論づけて終わる。ここまでを何度も繰り返している方に、よくお会いします。
「今日から全部やめよう」と思ってしまうのは、なぜでしょう

一気に変える方法が支持されやすいのは、数字がすぐに動くように感じられるからです。間食・お酒・揚げ物を同時にやめれば、体重や体調の変化は確かに早く出ます。体重計の数字が数日で1kg減ったり、朝の胃もたれがなくなったりすると、それだけでもう少し続けてみようという気になります。
もう一つ、「どうせやるなら中途半端にしたくない」という気持ちも働きます。少しずつの変化は自分に甘く見えてしまい、全部やめることのほうが誠実に思える。そう感じるのは、決して珍しいことではありません。
続かないのは、意志が弱いからではないのかもしれません

ただ、行動が変わっていく過程を見ると、話は少し違ってきます。厚生労働省のe-ヘルスネットで紹介されている「行動変容ステージモデル」では、人が新しい行動を身につけるまでに、次の5段階を通ると考えられています。
◆ 行動が変わるまでの5段階
- 無関心期:変える必要をまだ感じていない
- 関心期:変えたほうがいいとは思っているが、動けていない
- 準備期:やり方を具体的に決めはじめる
- 実行期:実際に行動を変えている
- 維持期:変えた行動が定着している
「今日から全部やめる」という決意は、この5段階でいうと準備期を飛ばして、いきなり実行期に飛び込んでいる状態です。代わりに何を食べるか、しんどい場面をどう乗り切るか、そこを決めないまま勢いだけで走り出してしまう。心当たりのある方も多いはずです。三日坊主は意志の弱さというより、準備期をすっ飛ばした結果と見たほうが近いように思います。
一気に変えて続く人と、数日で戻ってしまう人の差

もちろん、一気に変えてそのまま定着する方もいます。ただ、そういう方の話をよく聞くと、行動そのものは一度に変えていても、頭の中では準備期に当たる作業を先にすませていることが多いです。何を我慢して何は残すか、外食のときはどうするか、失敗した日はどう仕切り直すか。決めてから動いているので、崩れにくいです。
逆に数日で戻ってしまう場合は、決意だけが先に立ち、代わりに何を食べるか、続けにくい場面をどう乗り切るかが決まっていないことがほとんどです。全部同時にやめると、崩れる入り口も間食・お酒・揚げ物の3つに増えます。どこか1つでも崩れると、「もう今日はいいか」と他の2つまで一緒にゆるんでしまう。そんな経験、ありませんか。まとめてやめる方法のつらいところだと思います。
変える対象を1つに絞って、2週間だけ続けてみる

ここまでを踏まえると、通説を丸ごと否定する必要はありません。「一気に変える」ことそのものが悪いのではなく、準備を飛ばして複数の対象を同時に崩れやすくしていることが問題です。だとすれば、対処はシンプルです。変える対象を1つに絞ります。
★ 対象を1つに絞るときの決め方
間食・お酒・揚げ物のうち、いちばん頻度が高いものから選びます。頻度が高いものほど、変えたときの実感が早く出て、続ける支えになるためです。
期間は2週間を目安にします。行動が体に馴染むには数日ではまだ足りず、1か月では長すぎて途中で目的があいまいになりがちです。
記録も1項目だけにします。食べた・食べなかったを○×でつけるだけで十分です。

もう1つ絞れているのが分かる目安として、代わりに何を選ぶかを先に決めておくことも大切です。たとえば夜の間食を減らすと決めたら、小腹が空いたときに何を出すかを先に用意しておきます。副菜を1品増やすだけでも、間食への意識は自然とそれます。

もやしのナムル|レンジで2分、洗い物も少ない副菜の一例 ※画像はイメージです
| もやし | 80g |
| ごま油 | 3g(小さじ約0.8) |
| いりごま | 2g |
| 食塩 | 1g |
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もやしをさっと洗い、耐熱皿に入れてふんわりラップをかける。
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電子レンジ(600W)で2分加熱し、そのまま1分蒸らす。
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ざるにあげて水気をしっかり切る。
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ごま油・いりごま・食塩を加えて和える。
◆ 栄養価(1人分の目安)
※1食あたりの目安です
こうした小さな一皿を1つ決めておくだけで、絞った対象以外は今までどおりでいいという安心感が生まれます。他のところまで頑張らなくていいと分かっていると、絞った1つに気持ちが向きやすくなります。
2週間やってみて崩れた日があっても、そこで終わりにしなくて大丈夫です。翌日からまた同じ1つに戻ればいいだけです。定着してきたら、次に頻度の高いものを1つ選んで、同じことを繰り返します。全部を同時に背負わなくても、順番に置き換えていけば、行き着く先は変わりません。
おわりに
一気に変える方法がすべて間違っているわけではありません。ただ、多くの人にとっては、準備をしないまま複数の対象を同時に変えようとすることが、続かない一番の原因になっています。まずは1つだけ選んで、2週間続けてみてください。それができたら、次の1つに進めばいい。順番はゆっくりで大丈夫です。今日決めた1つと、気長に付き合ってみてください。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。持病があり食事について医師や管理栄養士の指導を受けている場合は、本記事の内容よりも、まず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 厚生労働省 e-ヘルスネット「行動変容ステージモデル」 | 無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期の5段階モデル | 「続かないのは、意志が弱いからではないのかもしれません」の節 |
| 日本食品標準成分表2020年版(八訂)文部科学省 | もやしのナムルの食材栄養値から算出 | 栄養価グリッド |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

