「脂質のところに印がついていたので、揚げ物をやめたんです。でも次の健診でも同じところに印がついていて」
健診の結果票を持ってきた方から、こういう話をよく聞きます。動いていないのは努力が足りないからではなく、印がついた項目と、変えた食習慣がかみ合っていないことが多いです。
脂質の欄には数値が4つ前後並んでいます。どれが何を意味していて、どれが食事で動きやすいのか。よくある見落としを5つ挙げながら整理します。当てはまるところだけ拾ってください。
つまずき1|LDLの数字だけを見ている
いちばん目につくのがLDLコレステロールです。ただ、脂質の欄はそれ1つで完結していません。
◆ 脂質異常症の診断基準(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版)
| 項目 | 基準 | 呼び方 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140 mg/dL以上 120〜139 mg/dL |
高LDLコレステロール血症 境界域 |
| HDLコレステロール | 40 mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪 | 150 mg/dL以上(空腹時) 175 mg/dL以上(随時) |
高トリグリセライド血症 |
| non-HDLコレステロール | 170 mg/dL以上 150〜169 mg/dL |
高non-HDLコレステロール血症 境界域 |
見慣れないのが4つめのnon-HDLコレステロールだと思います。総コレステロールからHDLを引いた値で、HDL以外のコレステロールをまとめて見るための数字です。結果票に載っていることもあれば、総コレステロールとHDLから自分で引き算できることもあります。
LDLが基準内でも、こちらが高く出ることがあります。LDLの1行だけを見て安心も落胆もしないでください。
つまずき2|中性脂肪が高いのに、油を減らしている
いちばん多い行き違いがこれです。名前に「脂肪」と入っているので、脂を減らす話だと受け取られます。
中性脂肪が高いときに見直したいのは、まず糖質とアルコールのほうです。ガイドラインの食事療法でも、高中性脂肪血症では炭水化物のエネルギー比率を50〜60%の設定の中でやや低めにし、アルコールの過剰摂取を制限すること、果物や果糖を含む加工食品の摂りすぎに注意することが挙げられています。魚に含まれるn-3系脂肪酸を増やすことも示されています。
つまり、揚げ物を我慢するより、毎晩のビールと締めのごはんを見直すほうが、この数値には効きます。
一方でLDLが高い場合は、飽和脂肪酸とコレステロールを減らす話になります。同じ「脂質異常症」でも、どの数字が高いかで手をつける場所が入れ替わります。
つまずき3|HDLを食事で上げようとしている
HDLは低いほうが問題になる数値なので、「上げる食べ物」を探す方が多いです。
ただ、この数値は食事だけで大きく動かしにくいところがあります。ガイドラインで挙げられている食事面の対応は、適正体重に近づけること、炭水化物のエネルギー比率をやや低めにすること、トランス脂肪酸を減らすこと。そして運動療法の併用が効果的だとされています。
なお、HDLは単独では薬を使う対象になりません。低めに出ていても、それ1つで慌てる数字ではないということです。ここに時間をかけるより、中性脂肪やLDLのほうを先に見たほうが実りがあります。
つまずき4|採血の条件をそろえていない
意外に見落とされるのが、いつ採血したかです。
中性脂肪は食事の影響を受けます。だから基準値も分かれていて、空腹時なら150 mg/dL以上、そうでなければ175 mg/dL以上が高中性脂肪血症とされます。ここでいう空腹時とは10時間以上の絶食のことです。水やお茶などエネルギーのない水分はとってかまいません。
前の晩に遅く食べた、朝に缶コーヒーを1本飲んだ。それだけで中性脂肪の数値は変わり得ます。去年と今年で条件が違えば、比べても意味が薄くなります。健診の前日と当日をそろえておくと、数値が自分の実力を映してくれます。
つまずき5|1回の結果だけで決めてしまう
数値は日によって動きます。1回上がっただけで食事を大きく変える必要はありませんし、1回下がっただけで元に戻していい理由にもなりません。
見てほしいのは並びのほうです。去年、一昨年の結果票と並べて、上がり続けているのか、横ばいなのか。境界域に入っている項目があるときは特にそうで、境界域は「まだ大丈夫」の意味ではなく、ほかにリスクがないかを一度確認しましょうという印です。
結果票は捨てずに1か所にまとめておいてください。受診のときに3年分を並べて見せられると、話が早く進みます。
食事で動かしやすいところから|きのこの炊き込みごはん
数字ごとに手をつける場所は違いますが、どの型でも共通して勧められるのが食物繊維です。ガイドラインの食事療法では1日25g以上が目標に挙げられています。
副菜を増やすのが王道ですが、続けやすいのは主食に混ぜてしまうやり方です。

きのこの炊き込みごはん|主食のまま食物繊維を足せる一品です ※画像はイメージです
しめじ・まいたけ・えのきを合わせて炊き込んだごはん。茶碗1杯(ごはん200g・きのこ40g)で、エネルギー約341kcal、脂質約0.8g、食物繊維は約4.4gです。1日25gの目標に対して、主食だけで6分の1近くを稼げます。食塩相当量は約1.2gなので、汁物と重ねる日は味付けを控えめに。
きのこは価格が安定していて、冷凍もできます。中性脂肪が気になる方は、白いごはんの一部をこれに替えると、量を減らさずに満足感を保ったまま炭水化物の質を変えられます。
おわりに
結果票の脂質の欄は、4つの数字が別々のことを言っています。全部を同時に良くしようとすると、たいてい的が絞れません。
今年の紙を出してきて、印がついた行を1つだけ選んでみてください。中性脂肪ならお酒と主食、LDLなら脂の種類。そこだけ手をつければ、次の1年の数字は意味のある比較になります。分からない行があれば、そのまま診察室で聞いてしまうのがいちばん早い方法です。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。脂質異常症の診断や治療方針、脂質管理の目標値は、その方の年齢・性別・合併症・喫煙や血圧などのリスク要因を含めて医師が総合的に判断します。ここに挙げた基準値は診断のための一般的な目安であり、個別の目標値とは異なります。食事の変更や受診の判断は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」 | 脂質異常症診断基準(LDL-C 140/HDL-C 40/TG 150・175/non-HDL-C 170 mg/dL)、空腹時の定義(10時間以上の絶食)、病型別の食事療法の重点、食物繊維25g/日以上 | 「つまずき1」〜「つまずき4」節・「食事で動かしやすいところから」節 |
| 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 | 米・きのこ類など食品のエネルギー・脂質・食物繊維の値 | 「食事で動かしやすいところから」節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。
