油を減らす習慣が続かないとき|置き換えを1つずつ試す進め方

脂質異常・コレステロール

油を減らそうとして、まず何を変えたか。そう聞くと、たいてい返ってくるのは料理の名前です。揚げ物をやめて焼き物にした。ムニエルをホイル焼きに替えた。

その努力は正しい方向を向いています。ただ、思ったほど数字が動かず、いつのまにか元に戻ってしまう。その理由を、実際の献立の数字から見ていきます。

「揚げるのをやめた」だけでは、あまり減らないことがある

同じ鮭80gを使った2つの主菜を並べてみます。片方はバターで焼くムニエル、もう片方はホイルで包んで蒸し焼きにしたもの。調理法としては、いかにも後者が軽そうに見えます。

◆ 同じ鮭80gの主菜を比べると

料理 エネルギー 脂質
さけのムニエル(薄力粉5g・バター8g) 約173kcal 約9.8g
鮭のホイル焼き(バター5g・野菜入り) 約149kcal 約7.4g

差は24kcal、脂質で2.4gです。料理の名前は大きく変わったのに、減った脂質はバター3gぶんでした。

内訳を割ってみると、はっきりします。バターが8gから5gになって21kcal減り、薄力粉5gをやめて17.5kcal減り、かわりに玉ねぎとしめじとしょうゆを足したぶんが14kcal増えた。差し引きで24kcalです。

ここに、続かない理由の半分があると思っています。手間は大きく変えたのに、変わった数字が小さい。手応えがないことは、人間なかなか続きません。

減っているのは、調理法の名前ではなく、鍋に入れた油の量そのものです。

目安を1つだけ覚えるなら、大さじ1

油の量を感覚でつかむために、1つだけ数字を持っておくと便利です。

サラダ油は大さじ1(12g)で、およそ106kcal。脂質は12g。

これは肉や魚に含まれる脂ではなく、自分でフライパンに入れた分です。炒め物、焼き物、和え物と、1日に3回まわしかければ、それだけで300kcalを超えます。

動脈硬化性疾患予防ガイドラインが示す食事療法では、脂質全体を総エネルギーの20〜25%、そのうち飽和脂肪酸を7%未満、コレステロールを1日200mg未満としています。1日1,800kcalの方なら、脂質全体でおよそ40〜50g。大さじ1が12gですから、調理油だけで枠の4分の1前後を使うことになります。

「揚げ物を減らす」より先に、毎日確実に使っている油のほうに目を向けたほうが、実は効きます。

1つずつ試す順番

全部を一度に変えると、たいてい戻ります。順番をつけます。

★ 上から順に、1つが慣れてから次へ

1. 油を「回しかけ」から「計って入れる」に変える
2. 1品だけ、油を使わない作り方に替える
3. バター・マヨネーズ・ドレッシングを1つ見直す
4. 揚げ物の回数に手をつける

1. まず計る。 フライパンの上でボトルを傾けるのをやめて、小さじや大さじで測って入れます。これだけで量が減る方が多いです。減らそうとしなくても、自分がどれくらい使っていたかが分かるだけで変わります。計量スプーンを出すのが面倒なら、油を注ぎ口の細いボトルに移し替えるのでもかまいません。

2. 1品だけ替える。 献立を全部変えず、主菜か副菜のどちらか1品を、油を使わない作り方にします。蒸す、ゆでる、ホイルで包む、電子レンジで加熱する。この段階では、味付けは今までどおりで大丈夫です。

3. 見えない油を1つ。 サラダのドレッシング、パンのバター、和え物のマヨネーズ。どれか1つだけ量を半分にするか、別のもので代えます。3つ同時にやると味気なさが勝ってしまうので、1つずつ。

4. 揚げ物は最後。 順番として最後に置いているのは、家族の献立と重なることが多く、いちばん抵抗が大きいからです。1〜3が身についたあとなら、回数を1回減らすくらいは無理なくできます。

実例|鮭のホイル焼き

さきほど比較に出した一皿を、あらためて。油をひかずに作れる主菜として、2番目の段階で使いやすい料理です。

鮭のホイル焼き

鮭のホイル焼き|フライパンに油をひかず、包んで蒸し焼きにする主菜です ※画像はイメージです

材料1人分
生鮭 80g(1切れ)
たまねぎ 20g
ぶなしめじ 15g
有塩バター 5g
こいくちしょうゆ 5g(小さじ1程度)
  1. たまねぎは薄切り、しめじは石づきを取ってほぐす。

  2. アルミホイルを広げ、たまねぎを敷いて鮭をのせ、しめじを散らす。

  3. バターをのせ、しょうゆを回しかけて、ホイルの口を閉じる。

  4. フライパンかトースターで10分ほど加熱する。フライパンの場合は少量の水を張ってふたをする。

1人分の目安は、エネルギー約149kcal、たんぱく質約18.9g、脂質約7.4g、食塩相当量約1.0gです。

このレシピにもバターが5g入っています。油を使わない作り方でも、風味づけの油はどこかに残るということです。ここをさらに削りたいときは、バターを2〜3gに減らして、かわりに酒を少しふるかレモンを添えます。ただしそれは、この作り方が習慣になってからで十分です。

つまずきやすいところ

減らしすぎて、続かなくなる。 油を完全に断つと、料理が味気なくなって長続きしません。脂質は必要な栄養素でもあります。ゼロにするのではなく、量を把握して選ぶという感覚のほうが、結果的に長持ちします。

油の種類だけ変えて安心する。 オリーブ油やこめ油に替えることには意味がありますが、量が同じならエネルギーはほぼ変わりません。種類の話は減らしたい油と選びたい油にまとめてあります。量と種類は、別の話として分けて考えてください。

1日単位で採点する。 外食が入った日に「今日は失敗」と数えはじめると、たいてい翌週にはやめています。1週間くらいの幅で見るほうが、実態に近いです。

おわりに

油を減らす話は、料理を作り替えることだと思われがちです。実際には、計量スプーンを1本出すところから始まります。

この記事で挙げた4段階を、1つずつでかまいません。1つ目が身につくまでに何週間かかっても、それは遅れではありません。明日の炒め物から、油を測って入れてみる。手が覚えたら、次に進めばいい話です。


免責事項・参考基準

本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。脂質異常症の食事療法は、その方の脂質の数値・病型・合併症・体格・服薬内容によって個別に決まります。脂質やエネルギーの目標量の設定、食事の変更は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。

参考にした基準・出典の系統

出典系統 内容 記事内の使用箇所
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」 動脈硬化疾患予防のための食事療法の目安(脂肪エネルギー比率20〜25%、飽和脂肪酸7%未満、コレステロール200mg/日未満) 「目安を1つだけ覚えるなら」節
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 調合油・バター・鮭など食品100gあたりのエネルギーと脂質 「あまり減らないことがある」節・「目安を1つだけ覚えるなら」節・「実例」節

※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

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