腎臓病とたんぱく質|摂りすぎないコツと適量

腎臓病サポート

「たんぱく質を減らしてください」と言われたけど、何をどれだけ食べればいいのかわからない。

外来でそう話してくれる患者さんは少なくありません。たんぱく質は肉・魚・豆腐だけに含まれているわけではなく、ご飯にも麺にも含まれています。「全体を少し減らす」という感覚を持てるようになるまで、最初は戸惑うのが普通です。

この記事では、腎臓病(CKD・慢性腎臓病)とたんぱく質制限の基本的な考え方と、毎日の食事で実践するためのヒントをまとめました。具体的な目標量は病状や体重によって一人ひとり異なります。必ず主治医・担当管理栄養士の指示を最優先にしてください。


この記事でわかること

  • なぜ腎臓病でたんぱく質を減らすのか、腎臓への負担とのつながり
  • CKDステージ別のたんぱく質目安(一般的な目安・個別値は主治医確認が必須)
  • 主菜の量の考え方と、低たんぱくで満足感を出す調理のコツ
  • たんぱく調整食品の使いどころ

なぜ腎臓病でたんぱく質を制限するのか

腎臓病とたんぱく質の関係

まず「なぜ減らすのか」を押さえておくと、食事管理が続けやすくなります。

たんぱく質は体内で分解されると、「老廃物(窒素化合物)」が生まれます。この老廃物を体の外に出すのが腎臓の役割のひとつです。腎臓の機能が落ちていると、この処理が追いつかなくなります。その結果、血液中に老廃物が蓄積し、体への悪影響につながっていきます。

たんぱく質を適切な量に絞ることで、腎臓にかかる処理の負担を軽くし、残っている腎機能をできるだけ長く保つのが食事療法の目的です。

ただし、減らしすぎも問題です。たんぱく質が足りなくなると、筋肉量が落ちたり、免疫が下がったりします。「少なければ少ないほどいい」ということはなく、適切な量を守ることが大切です。エネルギー(カロリー)も、たんぱく質を減らした分をご飯や油でしっかり補う必要があります。エネルギーが不足すると、体は筋肉を壊してエネルギーに変えようとし、逆に老廃物が増えてしまうためです。


CKDのたんぱく質目安はどれくらい?

CKDたんぱく質目安

日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」では、CKDのステージ(腎機能の程度)に応じたたんぱく質摂取量の目安が示されています。

CKDステージ別たんぱく質目安(一般的な目安)

ステージ(GFR区分) たんぱく質の目安
G1・G2(eGFR 60以上) 過剰摂取を避ける(制限は通常不要または緩やか)
G3a(eGFR 45〜59) 0.8〜1.0g/kg体重/日
G3b(eGFR 30〜44) 0.6〜0.8g/kg体重/日
G4(eGFR 15〜29) 0.6〜0.8g/kg体重/日
G5(eGFR 15未満・透析前) 0.6〜0.8g/kg体重/日

たとえば体重50kgの方がG3aなら、目安は「1日40〜50g」ということになります。体重60kgなら48〜60g。同じ体重でもG3bに進むと30〜40gと幅が下がるので、ステージによって考え方が変わってきます。数字だけ見ると少ない印象を受けますが、これが毎日の食事にどう反映されるかは、次の章で解説します。

必ず主治医に確認してください

上の数値はあくまで一般的な目安です。実際の指示量は、体重・腎機能・たんぱく尿の有無・合併症の状態などによって一人ひとり異なります。「何gまでにしてください」という個別の目標は、主治医または担当の管理栄養士に確認してください。自己判断で大幅に変えるのは危険です。


1日40gって、食事でどのくらいになる?

ここでは、体重50kgでG3bの方の目安にあたる「1日40g」を例にしてみます。数字だけ言われてもピンとこない方が多いと思うので、実際の食品で見てみましょう。

たんぱく質はほぼすべての食品に含まれています。主食のご飯(150g・1膳)にも約3.8gほど含まれています。3食のご飯だけで、すでに約11gほどになります。そこに主菜・副菜・汁物が加わるわけです。

主菜(肉・魚・豆腐など)の一般的なたんぱく質量の目安は次のとおりです。

主菜の代表的なたんぱく質量(目安)

食品 重量(目安) たんぱく質量(目安)
鶏むね肉(皮なし) 100g 約23g
鮭の切り身(1切れ) 約80g 約18g
木綿豆腐 1/4丁(約100g) 約7g
鶏卵(全卵) 1個(約50g) 約6g

※日本食品標準成分表(文部科学省・九訂)をもとに筆者作成。調理後の重量変化により実際の値と異なる場合があります。

1日の目安が40gであれば、主菜に使える量は「1食あたり魚なら40g前後、豆腐なら1/3丁前後」というイメージです。普通の一人前より少し小さめ。それでも汁物や副菜のたんぱく質が積み重なるため、主菜は「少しだけ小さく」を意識するのがポイントです。


主菜を「小さく・満足感あり」にする3つの工夫

主菜を小さく満足感ありに

たんぱく質を減らすと、最初は食事が寂しく感じることがあります。でも、工夫次第でしっかり満足できる主菜にできます。

1. たんぱく質が少ない食材を「かさ増し」に使う

主菜のメインをやや小さくして、代わりに野菜・こんにゃく・春雨・片栗粉でかさを増やします。たとえば鶏ひき肉に豆腐を混ぜて作る豆腐ハンバーグは、その代表例です。

シートのデータで確認すると、豆腐ハンバーグ(やわらか)1人分のたんぱく質は9.8g・エネルギー136.8kcal・リン82.7mgです。主菜として使いやすい値に収まっています。

豆腐ハンバーグ(やわらか)

豆腐ハンバーグ(やわらか)|たんぱく質9.8g・エネルギー136.8kcal(1人分の目安)※画像はイメージです

2. 高野豆腐など乾物系をうまく活用する

高野豆腐は乾燥品を水で戻して使うため、少量でかさが出ます。1食分のたんぱく質は約8.8g・エネルギー約114kcal(高野豆腐の煮物1人分の目安)。だしを吸わせてふっくら仕上げると、食べごたえが出ます。リンはやや高めなので、食べる量は指示に合わせて調整してください。

高野豆腐の煮物

高野豆腐の煮物(1人分の目安)※画像はイメージです

3. 油でエネルギーを補う

主菜のたんぱく質を減らした分、エネルギーが不足しやすくなります。炒め物に油を少し多めに使ったり、素揚げや南蛮漬けにする、マヨネーズや和え衣を活用するなどで、エネルギーを補いながら食べやすくする工夫ができます。油はたんぱく質をほとんど含まないので、腎臓病食では積極的に使って構いません。


よくある疑問に答えます

Q. お肉をやめれば制限できますか?

A. 「お肉だけやめれば大丈夫」という発想は少し危険です。上で紹介したように、たんぱく質は主食にも副菜にも含まれています。お肉をやめても魚・卵・大豆製品・乳製品のたんぱく質が合計されます。種類を問わず「1日のたんぱく質合計量」を意識することが大切です。

ただし、良質なたんぱく質(必須アミノ酸がバランスよく含まれるもの)を少ない量で効率よく摂ることが腎臓病食では大切です。肉・魚・卵・乳製品は「アミノ酸スコアが高い食品」として知られており、少量でも体の維持に役立ちます。大豆製品も良質なたんぱく源ですが、植物性の場合はアミノ酸バランスがやや異なります。どれを中心に使うかは、担当の管理栄養士に相談してみてください。

Q. 「低たんぱく」と書かれている食品は何が違うの?

A. 低たんぱく食品(たんぱく調整食品)は、主にご飯・パン・麺などの主食を中心に展開されています。通常の白米には1膳(150g)でたんぱく質が約3.8gほど含まれますが、低たんぱく米はこれを大幅に抑えた設計になっています。

主食のたんぱく質を減らすことで、主菜や副菜のたんぱく質をその分使えるようになります。食事全体のバランスを整えやすくなる、という使い方が基本です。

ただし、たんぱく調整食品はあくまで食事療法を支援するための食品であり、治療そのものではありません。医師・管理栄養士の指示のもとで使うものです。費用もかさむため、本当に必要な場面に絞って使うことを考えてみてください(→ 関連記事: 腎臓病食の食費を抑える|たんぱく調整と節約の両立)。

Q. カリウムやリンはたんぱく質と関係ありますか?

A. あります。たんぱく質が多い食品はカリウムやリンも含みやすい傾向があります。特にリンは腎臓の処理が難しくなると血中に増え、骨や血管に影響が出ることがあります。

たんぱく質を適正量に保つことで、カリウム・リンの過剰摂取も同時に抑えやすくなります。ただし、カリウムは野菜・果物からも摂れるため、たんぱく質制限だけで対応しきれない場合もあります。カリウムは野菜を茹でこぼすことで減らせますし、塩分にも別に1日の目標量があります。どちらもあわせて調整が必要な方は、主治医・担当管理栄養士に確認しながら少しずつ進めてみてください。


たんぱく調整食品の一般的な紹介

たんぱく調整食品の使い方

最後に、腎臓病の食事療法に取り組む方向けに普及している「たんぱく調整食品」について簡単に触れておきます。

低たんぱく米・低たんぱくパン・たんぱく質を抑えた麺類などが、医療機関や専門の通販ルートを中心に流通しています。通常の主食と比べてたんぱく質が少なく設計されており、食事療法をサポートする目的で使われます。

使う前に確認してほしいこと

  • 主治医・管理栄養士に「使ってよいか」「どの製品を選ぶか」を相談する
  • たんぱく調整食品は治療薬ではなく、食事療法を補助する食品です
  • カロリーはしっかり含まれているため、エネルギー摂取の面では通常食品と大きく変わらない製品が多い
  • 製品によってたんぱく質の調整幅・原材料・価格帯が異なるため、複数を比較してみることを勧めます

食材・製品の選び方は、担当の管理栄養士に相談するのが最も確実な近道です。


おわりに

腎臓病のたんぱく質制限は、「減らせば減らすほどいい」ではありません。ステージに応じた適切な量を守りながら、エネルギーをしっかり摂ることが基本です。

実際の食事では、主菜を少し小さくして、かさ増し食材や油でボリュームを出す、という積み重ねが現実的なアプローチです。数値の目標は「自分の値を主治医に確認する」ところからしか始まりません。外来でひとこと「1日何gまでですか」と聞いてみてください。


免責事項・参考基準

本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。腎臓病(CKD)の食事療法は、そのステージ・合併症・服薬内容・血液検査の数値によって個別に決まります。たんぱく質摂取量・食事内容の変更前には、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。

参考にした基準・出典の系統

出典系統 内容 記事内の使用箇所
日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」 CKDステージ別たんぱく質目安 「CKDのたんぱく質目安はどれくらい?」節
文部科学省「日本食品標準成分表」 主菜のたんぱく質含有量 「1日40gって、食事でどのくらいになる?」節

※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。


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