「腎臓病の食事を作るようになったら、食費がすごく上がった」という声を、家族から相談を受けるときによく耳にします。
確かに、低たんぱく米や調整食品を揃えると一気に出費が増えます。でも、うまく使いどころを絞れば、普通のスーパーで買える食材でも十分対応できる場面は多いんです。
この記事では、腎臓病食に取り組む家族がよく抱える疑問に、管理栄養士の立場から答えていきます。費用を抑えながら無理なく続けるためのヒントを、Q&A形式でまとめました。
◆ この記事でわかること
- 腎臓病食で食費が上がる理由と、費用を抑えるための考え方
- カリウムを減らす調理(茹でこぼし・水さらし)の手間と実際
- 安価な食材で腎臓病食に対応するコツ
- たんぱく調整食品をどこで使うか
- 医師・管理栄養士の指示を最優先すべき理由
まず知っておきたい:腎臓病食の基本

腎臓病(慢性腎臓病・CKD)の食事管理は、病期や個人の状態によって指示内容が大きく異なります。ここでは一般的な保存期(透析前)の管理ポイントを整理します。
調整が必要な栄養素は主に4つです。
たんぱく質を減らす: 腎臓への負担を軽くするために、たんぱく質の量を通常より少なく抑えます。具体的な量は体重や腎機能の状態によって指示されるため、主治医・担当管理栄養士の指示量を必ず確認してください。
カリウムを制限する(進行例の場合): 腎臓の働きが落ちると、カリウムが体内にたまりやすくなります。野菜・果物・いも類に多く含まれるため、調理でカリウムを減らす工夫が必要になることがあります(腎機能の程度による。進行が軽い場合は制限不要のこともあります)。
塩分を抑える: 腎臓への負担と血圧管理の両面から、1日3〜6g未満を目標とするのが一般的です(「CKD診療ガイドライン2023」日本腎臓学会)。
エネルギーをしっかり摂る: たんぱく質を減らす代わりに、ご飯や油などでエネルギーをしっかり補うことが大切です。エネルギー不足になると、体は筋肉を分解してエネルギーに変えようとし、腎臓の負担が逆に増えてしまいます。
Q1|たんぱく質を減らすと食費が上がる?

「低たんぱく米を買い始めたら月の食費が大幅に増えた」という話は珍しくありません。
食費が上がりやすいのは、たんぱく調整食品(低たんぱく米・たんぱく調整ご飯・でんぷん麺など)を毎食使うケースです。これらは効果的な道具ですが、価格は一般品の3〜5倍ほどになることが多く、毎食使えば出費は当然増えます。
では、どう考えるか。
たんぱく調整食品の本来の使いどころは、「通常のおかずを食べながら、主食からのたんぱく摂取を減らしたい場面」です。おかずでのたんぱく量が指示量内に収まっているなら、一般のご飯を指示量の分だけ食べて節約するという考え方もあります。
★ 節約のヒント
たんぱく調整食品は「毎食必ず使うもの」ではなく「ここぞという場面で使う道具」として位置づけると費用を抑えやすくなります。外食時・献立の調整が難しい日・どうしても主食量を通常より多くしたい場面などが活用どころです。使いどころは担当管理栄養士に相談するのが確実です。
Q2|カリウムを抜く調理は手間がかかる?

下ゆで(茹でこぼし)が生きる副菜の代表が、ほうれん草のおひたしです。ほうれん草はもともとカリウムの多い野菜ですが、しっかり下ゆですることで食べやすい範囲に抑えられます。

ほうれん草はしっかり下ゆでしてから使う。茹でこぼしでカリウムを抑えやすくなります。※画像はイメージです
◆ 栄養価の目安(ほうれん草のおひたし 1人分・下ゆで済み)
※下ゆでした場合の一例です。食べてよい量・回数は主治医・担当管理栄養士の指示に従ってください。
茹でこぼしや水さらしは、野菜に含まれるカリウムを水に溶かして減らす調理方法です。カリウムは水溶性の成分なので、水にさらしたり、たっぷりのお湯で下茹でして湯を捨てたりすることで、カリウム量を抑えることができます。
「毎回そんな手間をかけられない」と感じる方も多いのですが、慣れると工程自体はそれほど複雑ではありません。
茹でこぼしの基本
小さく切る(カリウムが出やすくなる)→たっぷりのお湯で茹でる→お湯を捨てて水気をしぼる→改めて調理する。
この手順を知っていれば、ほうれん草のおひたしも、大根の煮物も、まず下茹でするひと工程を加えるだけです。
水さらしの目安(一般的な調理知識として)
いも類や根菜は、切ってから水に10〜15分ほどさらすだけでもカリウムが抜けやすくなります。「切ったらとりあえず水にひたす」を習慣にすると、特別な準備なく毎日続けられます。
◆ カリウム制限が必要かどうかは指示を確認
カリウムの制限が必要かどうか、また制限量は、腎機能の程度(eGFR・血液検査結果)によって異なります。腎機能が軽度の段階ではカリウム制限が不要なケースもあります。主治医・担当管理栄養士の指示なく独自に厳しく制限するのは避けてください。指示を確認してから取り組みましょう。
Q3|安い食材で腎臓病食は作れる?

作れます。特別な高価な食材は必須ではありません。
重要なのは食材の種類より「たんぱく質量を把握しながら量を調整する」考え方です。
低たんぱく・安価な食材の例
こんにゃく、春雨、片栗粉・でんぷん類、白菜、キャベツ、大根、きゅうりなどの淡色野菜、ご飯やうどんなどの主食(たんぱく質は少なめ)。これらはスーパーで手に入る定番食材で、価格も比較的安定しています。
特にこんにゃくはたんぱく質もカリウムも少なく、かさ増しに向いています。炒め物・煮物・おでんなど汎用性も高い。
たんぱく質が多い食材の使い方
肉・魚・大豆製品はたんぱく質が多いため、量の調整が必要です。でも「多いから使えない」ではなく、「量を減らして使う」という発想で十分対応できます。
たとえば、豆腐は比較的たんぱく質が少ない大豆製品で、価格も手ごろです。主菜として少量使いながら、副菜でこんにゃくや野菜を多めにすると、費用を抑えながらたんぱく量を指示内に収めやすくなります。
★ 安く抑える食材選びのポイント
| 活用しやすい | 量の調整が必要 |
|---|---|
| こんにゃく・春雨・でんぷん類 | 肉・魚(1食の量を指示内に) |
| 白菜・大根・キャベツ(茹でこぼし使用) | 大豆製品(豆腐・納豆・豆類) |
| ご飯・うどん(主食) | 乳製品(チーズ・牛乳) |
※上記は一般的な目安です。食材の使用可否・量は担当管理栄養士の指示に従ってください。
Q4|果物は全部NG?野菜も食べられない?
カリウム制限が指示されている場合、果物は特に注意が必要です。果物に含まれるカリウムは、野菜のように茹でこぼしで減らすことが難しいものが多いためです。
缶詰の果物(シロップを捨てて使う)は生の果物よりカリウムが少ない場合があります。ただしシロップに糖分が多いため量に注意が必要で、他の疾患との兼ね合いもあります。
野菜は「茹でこぼしをすれば食べられる量が増える」のが基本的な考え方です。ほうれん草・ブロッコリー・じゃがいもなどカリウムが多い野菜も、下茹でして使うことでカリウムを減らせます。
食べられる食品・量については、個人の検査値に基づいて指示される内容が最優先です。「この食品は食べていいか」という具体的な質問は、主治医や担当管理栄養士に確認するのが一番確実です。
Q5|たんぱく調整食品はどう使い分ける?
低たんぱく米・でんぷん麺・低たんぱくパンなどのたんぱく調整食品は、通常品に比べてたんぱく質を大幅に減らした加工品です。一般のご飯と比べて、たんぱく質量が5分の1以下になる製品もあります。
費用がかかるのは確かですが、「毎食使わなければいけない」ということはありません。
◆ たんぱく調整食品を活かしやすい場面
- 外食や中食(お弁当・テイクアウト)でおかずのたんぱく質が多くなる日
- 献立上、主食を少し多めに食べさせてあげたい日
- 通常の調理が難しい日(忙しいとき・体調不良など)
使いどころを絞ることで、費用を抑えながら必要な場面でしっかり活用できます。具体的な使用頻度や選び方は、担当管理栄養士に相談してみてください。
毎日続けるための3つの考え方

最後に、腎臓病食を長く続けるうえで大切にしてほしいことを整理します。
1. 完璧より継続
厳密に守りすぎてストレスが限界になるより、8割程度を安定的に続けるほうが、長期的には腎臓に対してプラスになります。「できない日があっても次の食事でカバーする」という柔軟な考え方が長続きのコツです。
2. 調理を簡単にする仕組みを作る
茹でこぼしが手間に感じるなら、野菜を切ったらまとめて下茹でして冷蔵保存しておく方法があります。週の初めにまとめて下処理しておくと、毎日の調理が楽になります。こんにゃくや春雨を多めに買い置きしておくのも、あと一品の調整がしやすくなります。
3. 食事記録で担当管理栄養士と共有する
毎日の食事内容をメモや写真で記録し、定期受診時に担当管理栄養士に見せると、具体的なアドバイスをもらいやすくなります。「昨日の夜はこれを食べた」という情報が一番参考になります。
◆ 医療免責・おことわり
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人に対する医療・栄養指導ではありません。腎臓病の食事管理は病期・腎機能・合併症・体格によって指示内容が大きく異なります。たんぱく質・カリウム・塩分・エネルギーの具体的な目標量は、必ず主治医・担当管理栄養士の指示に従ってください。本記事の内容が個別の治療方針と異なる場合は、医療従事者の指示を優先してください。
参考基準
| 項目 | 基準・出典 |
|---|---|
| たんぱく質(CKD保存期) | 0.6〜0.8 g/kg標準体重/日 — 日本腎臓学会「CKD診療ガイドライン2023」 |
| 食塩 | 3〜6 g/日未満 — 同ガイドライン |
| カリウム(進行例) | 1500〜2000 mg/日以下(高K血症時)— 同ガイドライン |
| たんぱく質(一般成人) | 推定平均必要量・推奨量 — 厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」 |


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