糖尿病の食事でたんぱく質をしっかり摂る方法|大豆製品・魚・卵の選び方

糖尿病ケア

「糖尿病だから糖質を減らさなきゃ」。そう意識して主食を減らすと、食事全体の量が少なくなりやすくなります。

気づかないうちにたんぱく質も一緒に減っている、ということが少なくありません。「最近、脚が細くなった気がする」「前より疲れが抜けにくい」。栄養相談の場では、こうした声を聞くことがよくあります。その裏に筋肉の減少が隠れていることは、栄養の世界ではよく知られています。

この記事では、糖尿病の食事でたんぱく質が不足しやすい理由と、毎日の食事で無理なく補う方法をお伝えします。ただし、腎機能の状態によってたんぱく質の摂り方は大きく変わります。まずは主治医や担当の管理栄養士に確認することが大前提です。

この記事でわかること

  • 糖尿病でたんぱく質が不足しやすい理由
  • たんぱく質が体の中で果たす役割
  • 大豆製品・魚・卵・乳製品の選び方と活用のコツ
  • 腎機能が気になる場合の注意点

なぜ糖尿病の食事でたんぱく質が不足しやすいのか

たんぱく質が不足しやすい理由

糖尿病の食事制限と聞くと、多くの方が「糖質を減らす」「カロリーを抑える」をまず意識します。

主食(ごはん・パン・麺)をぐっと減らすと、1回の食事のボリューム感が下がります。おかずまで同じように減らしてしまうと、たんぱく質の摂取量が知らないうちに落ちてしまう。これが不足の主な原因のひとつです。

もうひとつの理由は、脂質が多い肉類を「控えた方がいい」と感じて遠ざけてしまうことです。脂身の多い肉を控えること自体は悪くありませんが、「肉全体を減らす」「魚も面倒だから省く」となると、たんぱく質源が一気に少なくなります。

糖質を減らすことと、たんぱく質をしっかり摂ることは、両立できます。この点を意識するだけで、食事の組み立て方がずいぶん変わってきます。


たんぱく質は体の「材料」。不足すると何が起きるか

たんぱく質の役割

たんぱく質は、筋肉・臓器・皮膚・髪の毛など、体のあらゆる組織をつくる材料です。食事から摂ったたんぱく質は消化・吸収されてアミノ酸に分解され、体の必要な場所で再び組み立てられます。

糖尿病では、インスリンの働きが落ちている分、筋肉がエネルギーとして使われやすいという面があります。たんぱく質の摂取が少ないと、筋肉の分解が進みやすくなります。

筋肉が減ると何が起きるかというと、基礎代謝が下がり、血糖値のコントロールがさらに難しくなる悪循環につながります。歩く力・立つ力が落ちてくると、日常生活の質にも影響してきます。

「炭水化物のことばかり考えていて、おかずが手薄になっていた」というパターンは、栄養相談でよく耳にします。


腎機能が落ちている場合は、たんぱく質を増やさないで

腎機能が落ちている場合

糖尿病が長期にわたると、腎機能に影響が出てくることがあります(糖尿病性腎症)。

腎機能が低下しているときは、たんぱく質を多く摂りすぎると腎臓への負担が増えることが知られています。「たんぱく質が大事」という話を聞いて増やした結果、腎臓に余計な負担をかけてしまう、ということが実際に起こり得ます。

腎機能低下時は必ず主治医・担当管理栄養士に確認を

この記事でお伝えする内容は、腎機能が保たれている糖尿病患者さん向けの一般的な情報です。eGFRの値や尿たんぱくの状態によっては、たんぱく質の量を制限する必要があります。血液検査・尿検査の結果をもとに、主治医や担当の管理栄養士の指示を必ず優先してください。

ここから先の内容は、腎機能への影響がまだ出ていない方(または主治医から制限の指示を受けていない方)を対象にしています。


大豆製品はたんぱく質の優秀な供給源

たんぱく質を補う食材選び

糖尿病の食事でたんぱく質源として特に活用しやすいのが、大豆製品です。

豆腐・納豆・豆乳・油揚げ・高野豆腐などは、たんぱく質を含みながら糖質が少なく、血糖値への影響も比較的おだやかです。大豆のたんぱく質(植物性たんぱく質)は、必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。

炒り豆腐で野菜と一緒に

木綿豆腐を使った炒り豆腐は、卵や野菜と合わせるだけで、たんぱく質を複数の食材から補える一品です。木綿豆腐100gあたりのたんぱく質は約7g(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)。小鉢1人分で豆腐を100g程度使えば、副菜にしてはかなりのたんぱく質が取れます。

炒り豆腐を作るときのポイント

木綿豆腐はキッチンペーパーで水気を切ってから炒めると、べちゃっとせず食べやすくなります。にんじん・しいたけ・さやえんどうを加えると彩りと食物繊維も補えます。卵を1個加えれば、動物性たんぱく質も一緒に摂れます。

炒り豆腐

炒り豆腐 ※画像はイメージです

ひじきと大豆の煮物は栄養の詰め合わせ

大豆の水煮を使ったひじき煮は、たんぱく質・食物繊維・鉄をまとめて補える組み合わせです。

作り置きにも向いていて、2〜3日分まとめて仕込んでおくと食事の準備が楽になります。

ひじきと大豆の煮物(1食あたりの目安)

100kcal
エネルギー
6.0g
たんぱく質
14.4g
炭水化物
7.0g
食物繊維
736.6mg
カリウム
108.9mg
リン
1.3mg
0.8g
食塩相当量

※1食あたりの目安です。

ひじきと大豆の煮物

ひじきと大豆の煮物 ※画像はイメージです

ただし、カリウムとリンが多い食材でもあります。腎機能低下時はひじきや大豆を控えるよう指示されることがあるため、腎症が進んでいる方は必ず主治医・管理栄養士に確認してください。


魚を週3〜4回の目安で取り入れる

魚は高たんぱく・低糖質で、糖尿病の食事に取り入れやすい食材です。

特に青魚(さば・いわし・さんま・あじ)には、EPAやDHAといった不飽和脂肪酸が含まれています。これらは血中の中性脂肪を下げる働きがあるとされており、糖尿病に合併しやすい脂質異常症への対策としても注目されています(参考: 日本動脈硬化学会の見解)。

「魚は下処理が面倒」という声をよく聞きます。切り身を選ぶ、缶詰を活用する、という形から始めると続けやすくなります。サバ缶は汁ごと使えて手間いらず。みそ汁や煮物に加えるだけでたんぱく質が増えます。

白身魚(たら・かれい・きんめだい)は脂質が少なく、胃への負担も小さめ。焼き物・蒸し物にしやすく、嚥下が気になる方にも使いやすい食材です。


卵・乳製品は手軽なたんぱく質源

卵は1個で約6gのたんぱく質を摂れる優秀な食材です(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)。調理のバリエーションが広く、朝食・昼食・副菜と場面を選びません。

1日1個を目安に取り入れる方が多いですが、摂取量の上限については食事全体とのバランスで主治医に確認してください。コレステロールの問題については、食事から摂るコレステロールと血中コレステロールの関係は個人差が大きく、一律に制限する考え方は変わりつつあります(日本人の食事摂取基準2020年版以降、コレステロールの上限値は設定されていません)。

牛乳・ヨーグルト・チーズも良いたんぱく質源ですが、糖質(乳糖)が含まれる点は意識しておくとよいです。特に加糖ヨーグルトや甘いチーズは糖質が増えます。プレーンヨーグルト・無糖タイプを選ぶのが基本です。


肉は「部位を選ぶ」発想で続けやすく

「肉は脂質が多いから控えた方がいい」と感じる方もいますが、部位によってかなり差があります。

選びやすい低脂質の肉の部位

鶏肉 ムネ肉・ささみ(皮なし)
豚肉 ヒレ・モモ(赤身)
牛肉 ランプ・モモ(赤身)

※部位によって脂質量は大きく異なります。調理方法(蒸す・茹でる)でさらに脂を落とせます。

鶏ムネ肉は100gあたりのたんぱく質が約23g(皮なし、日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)と高く、スーパーでも手に入りやすいコスパのよい食材です。蒸し鶏にして常備しておくと、サラダ・汁物・和え物にすぐ使えます。


1食のたんぱく質を「分散」させる

たんぱく質は1回にまとめて大量に摂るより、3食に分けて摂る方が吸収・利用されやすいとされています。

特に朝食でたんぱく質が少なくなりがちな方が多いです。トースト1枚だけ、菓子パンだけ、というパターンは糖質中心になりやすく、たんぱく質が極端に少なくなります。

朝食に卵1個・豆腐の味噌汁・ヨーグルトといった組み合わせを加えるだけで、たんぱく質のバランスがかなり整ってきます。昼と夜は魚や肉のメインを置けば、無理なく1日分を補えます。

「おかずを3品全部作れない」という日は、納豆・豆腐・卵のどれかを1つ食卓に出すだけでたんぱく質の底上げになります。完璧にしようとすると続かないので、1品追加の発想で十分です。


おわりに

糖尿病の食事でたんぱく質を意識することは、筋肉を守り、血糖コントロールを長く続けるための土台になります。「今日の夕食に豆腐を1丁追加する」「サバ缶をみそ汁に入れてみる」——そんな小さな1品追加から始めてみてください。大豆製品・魚・卵・乳製品・赤身の肉を日替わりで組み合わせると、無理なく食材の幅が広がっていきます。

腎機能の状態によっては、たんぱく質を増やすことが逆効果になる場合もあります。血液検査や尿検査の結果を主治医・担当管理栄養士に確認しながら、自分の状態に合った量を見つけていきましょう。


免責事項・参考基準

本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。糖尿病の食事療法は、その方の病態・合併症・治療方針・服薬内容によって変わります。腎機能が低下している場合のたんぱく質摂取量は別の判断が必要です。食事の変更前には、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。

参考にした基準・出典の系統

出典系統 内容 記事内の使用箇所
日本人の食事摂取基準(2025年版)(厚生労働省) たんぱく質の目標量・推奨量 「たんぱく質は体の材料」節
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」 糖尿病食事療法の推奨 全体
文部科学省「日本食品標準成分表」 食品のたんぱく質含有量 食材別の節

※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。


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