市販のやわらか食・とろみ剤の選び方|学会分類の表示を見る

やわらか介護食

棚の前で、表示の名前だけが増えていく

介護用品売り場やドラッグストアの棚には、似たような見た目の商品がたくさん並んでいます。パッケージには「区分」と書かれたもの、色のマークが付いたもの、「コード」という数字が書かれたもの。とろみをつける粉には「段階2」というような表示もあります。

どれも「やわらかさ」や「とろみの強さ」を表しているはずなのに、言葉がバラバラで、結局どれを選べばいいのか分からなくなる。そんな声をよく聞きます。

この記事では、売り場で目にする4つの表示を同じ物差しで並べて、パッケージのどこを見れば判断できるかを整理します。どれか一つが正解というより、表示の意味が分かれば、自分に合う一つが見つけやすくなる、という話です。

◆ この記事で扱うこと

  • 医療・介護の現場で使われている「学会分類2021」のコード
  • スーパー・ドラッグストアの「ユニバーサルデザインフード」の区分
  • 色で選ぶ農林水産省の「スマイルケア食」
  • 飲み物・汁物にとろみをつける「とろみ調整食品」の段階

表示が4つあるのは、決めている団体が違うから

決めている団体が違うだけ

同じ「やわらかさ」の話なのに表示がバラバラなのは、それぞれ作っている団体が違うためです。医療・介護施設が連携するために学会が作った分類、食品業界が自主規格として作った表示、農林水産省が普及を進める識別マーク、とろみをつける商品のパッケージ表示。目的も対象とする売り場も違うので、統一されていません。

ただし、どの表示も根っこでは「かむ力・飲み込む力にどれくらい配慮した食品か」という同じことを説明しています。そこで、この記事では医療・介護現場の共通言語である学会分類のコードを軸に、残り3つの表示を重ねて見ていきます。

医療・介護の共通言語|学会分類2021のコード

0〜4のコードで表す

日本摂食嚥下リハビリテーション学会が定める「嚥下調整食学会分類2021」は、食事の形態を0から4までのコードで表す分類です。数字が大きいほど、かむ力を必要とする形態になります。

コード 名称 形のイメージ
0j 嚥下訓練食品0j 均質でやわらかいゼリー。スライス状にすくって丸のみできるもの
0t 嚥下訓練食品0t とろみのついた水分。少量を丸のみする訓練用
1j 嚥下調整食1j ゼリー・プリン・ムース状
2-1 嚥下調整食2-1 なめらかで均質なペースト状
2-2 嚥下調整食2-2 やわらかい粒などを含む、やや不均質なペースト状
3 嚥下調整食3 舌と上あごの間でつぶせるやわらかさ
4 嚥下調整食4 歯ぐきでつぶせる〜箸やスプーンで切れるやわらかさ

たとえば、じゃがいもと牛乳で作るポタージュスープは、ミキサーにかけると粒が残らず、なめらかで均質なペースト状に仕上がります。コード2-1の形に近い、身近な一皿です。

ポタージュスープ

ポタージュスープ|ミキサーにかけるとなめらかなペースト状になる一皿 ※画像はイメージです

材料1人分
じゃがいも(皮なし) 60g
たまねぎ 20g
牛乳 80g
有塩バター 5g
  1. じゃがいもとたまねぎは薄切りにし、バターで透き通るまで弱火で炒める。

  2. ひたる程度の水を加え、じゃがいもがやわらかくなるまで煮る。

  3. 粗熱を取り、牛乳と合わせてミキサーにかけ、粒が残らないようになめらかにする。

  4. 鍋に戻して温め直し、味をととのえる。

◆ 栄養価(1人分の目安)

125.8kcal
エネルギー
4.0g
たんぱく質
7.2g
脂質
0.2g
食塩相当量

※1食あたりの目安です

なお、本人にどのコードが合うかは、見た目だけで家族が判断するものではありません。嚥下機能の状態によって適切な段階は変わるため、主治医・言語聴覚士・担当の管理栄養士に確認したうえで選んでください。

スーパー・ドラッグストアの表示|ユニバーサルデザインフードの4区分

スーパーで見る表示

日本介護食品協議会が定める自主規格が「ユニバーサルデザインフード(UDF)」です。スーパーやドラッグストアで見かける介護食の多くに、この区分が表示されています。区分の名称は「かまなくてもよい」「舌でつぶせる」「歯ぐきでつぶせる」「容易にかめる」の4つです。

学会分類のコードとおおよそ重ねると、次のようになります。

UDF区分 おおよそ対応する学会分類コード
かまなくてもよい 1j・2-1・2-2
舌でつぶせる 3
歯ぐきでつぶせる 4(の一部)
容易にかめる 4(の一部)

パッケージには、この4つの区分名がどこかに必ず記載されています。学会分類のコードで段階が分かっている場合は、この表を目印にすれば、売り場でも同じ段階の商品を探しやすくなります。

色で選ぶ農水省の表示|スマイルケア食

色で選ぶ農水省の表示

農林水産省が普及を進めている識別マークが「スマイルケア食」です。こちらは区分の数字ではなく、色で対象を分けています。

★ 3色の意味

青マークは、かむことにも飲み込むことにも問題がない方向けで、健康維持のための栄養補給を目的とした食品です。黄マークは、かむことに問題がある方向けの食品。赤マークは、飲み込むことに問題がある方向けの食品です。

赤マークの商品は、飲み込みへの配慮の度合いによってさらに段階分けされています。段階の目安は商品ごとにパッケージや公式情報に記載されているので、選ぶときはそこを確認してください。色だけで即決めず、まずは黄色か赤かという大枠を確認し、細かい段階は表示を見て決める、という順番が分かりやすいと思います。

飲み物・汁物を選ぶときの目印|とろみ調整食品の3段階

濃いほど安全ではない

お茶やお味噌汁など、水分にとろみをつけるときに使うのが「とろみ調整食品」です。学会分類2021(とろみ)では、段階1「薄いとろみ」、段階2「中間のとろみ」、段階3「濃いとろみ」の3段階で示されています。

段階 スプーンを傾けたときの様子
段階1 薄いとろみ すっと流れ落ちる。ストローでも吸いやすい
段階2 中間のとろみ とろとろと流れる。ストローで吸うにはやや力がいる
段階3 濃いとろみ 形がある程度保たれ、流れにくい。ストローでは吸えない

★ 買うとき・使うときに気をつけたいこと

同じ「段階2」でも、商品の銘柄によって同じ量を入れたときの仕上がりの濃さが違うことがあります。まずはパッケージの早見表どおりの分量で少量作り、味や口当たりを確かめてから量を調整してください。とろみ調整食品にもエネルギーがあるため、糖尿病などで摂取エネルギーを管理している場合は、使う量も含めて計算に入れる必要があります。

とろみの段階も、コードの段階と同じく、本人の嚥下状態に合わせて専門職が決めるものです。「濃いほうが安全」というものではなく、濃すぎるとかえって飲み込みにくくなったり、水分摂取量そのものが減ってしまうこともあります。

場面で選ぶ、迷ったときの決め方

4つの表示を並べてみましたが、全部を暗記する必要はありません。場面ごとに、見るところを1つ決めておけば十分です。

  • 本人にどの段階が合うか分からない、または初めて選ぶとき → 自己判断で選ばず、まず主治医・言語聴覚士・担当の管理栄養士に段階を確認する
  • 外出先やコンビニで手軽な一品がほしいとき → パッケージのUDF区分表示を見て、いつもと同じ区分の商品を選ぶ
  • 水分にとろみをつけたいだけのとき → とろみ調整食品の段階表示を確認し、初めての銘柄は少量で試す
  • じっくり比較して選びたいとき → スマイルケア食の色分けや、介護食の宅配という選択肢|やわらか食を続けるコツで紹介した宅配サービスも候補に入れる

おわりに

表示の名前を全部覚えておく必要はありません。次に売り場に立ったときは、パッケージのどこか1か所に書かれている「コード」か「区分」の文字を、まず見つけてみてください。それだけで、次に何を選べばいいかが少し分かりやすくなるはずです。

段階を決めるところだけは、自己判断で上げ下げせず、専門職と確認しながら進めてください。それ以外の細かい違いは、少しずつ慣れていけば十分だと思います。


免責事項・参考基準

本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。嚥下調整食の段階やとろみの程度は、嚥下機能・基礎疾患・服薬内容によって個別に決まります。食事形態やとろみの程度を変更する際は、自己判断せず、必ず主治医・言語聴覚士および担当管理栄養士の指示を優先してください。

参考にした基準・出典の系統

出典系統 内容 記事内の使用箇所
日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食学会分類2021」 コード0j・0t・1j・2-1・2-2・3・4の形態区分、とろみの3段階(薄い・中間・濃い)、UDF区分との対応関係 コードの表・とろみの表・UDF対応表
日本介護食品協議会 ユニバーサルデザインフード UDFの区分名称(かまなくてもよい・舌でつぶせる・歯ぐきでつぶせる・容易にかめる) UDFの節
農林水産省「スマイルケア食」 青・黄・赤の識別マークの定義 スマイルケア食の節
日本食品標準成分表2020年版(八訂)文部科学省 ポタージュスープの食材栄養値の根拠系統 栄養価グリッドの基礎

※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

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