高齢者の間食|栄養補給になるおやつの選び方

やわらか介護食

「おやつをあげたいけど、甘いものばかりでいいの?」

そんな疑問を持ちながら、高齢の親のために間食を用意している方は多いと思います。若い頃と違い、高齢になると1回の食事で食べられる量が減ります。3食だけでは必要な栄養を満たせないケースも出てくる。そこで意味を持つのが間食(補食)の存在です。

高齢者の間食は「甘いものを楽しむ時間」から「食事で不足した栄養を補う時間」へと役割が変わります。この視点で選ぶと、おやつの選び方がまったく違ってきます。

この記事でわかること

  • 高齢者に間食(補食)が必要な理由とフレイル予防のつながり
  • 栄養補給になる間食の選び方(たんぱく質・エネルギー)
  • 市販品と手作りを比較した具体例
  • 誤嚥・窒息リスクがある食品と形態の注意点
  • 間食を取り入れるタイミング・量のめやす

高齢者の間食は「補食」と考える

高齢者の間食は補食と考える

高齢になると、食欲が落ちたり、消化機能が低下したりして、1回の食事量が自然と減っていきます。3食きちんと食べているつもりでも、トータルのエネルギーやたんぱく質が不足していることは珍しくありません。

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、75歳以上の高齢者のエネルギー必要量として、身体活動レベルの低い男性でおよそ1,800kcal前後、女性でおよそ1,500kcal前後が示されています。食が細い高齢者は、3食だけではこの量に届かないことも多い。

たんぱく質については、フレイル予防の観点から体重1kgあたり1.0〜1.2g/日が目安とされています。体重50kgなら1日50〜60gが目標。これを3食に均等に分けると、1食あたり17〜20gが必要です。食が細い方が毎食この量を確保するのはなかなか大変です。

間食を1日1〜2回の「補食」として取り入れることで、不足しがちなエネルギーとたんぱく質を補いやすくなります。「おやつ」という感覚から「第4・第5の食事」という感覚に切り替えると、選ぶ食品も自然と変わってきます。


フレイルと低栄養のリスクを知る

高齢者の栄養不足が続くと、筋肉量や筋力が落ちていきます。これがフレイル(体の虚弱化)サルコペニア(筋肉減少症)の入口になります。

転倒・骨折のリスクが高まり、入院や寝たきりへとつながるケースも少なくありません。食欲の低下や食事量の減少は、ある意味で「進行するフレイルのサイン」でもあります。

だからこそ間食のタイミングを使って、たんぱく質とエネルギーを少しでも上積みすることが大切です。甘いお菓子を1枚食べるかわりに、たんぱく質を含む食品を選ぶだけで、1日の積み重ねが変わってきます。


栄養補給になる間食の選び方

栄養補給になる間食の選び方

間食で意識したい栄養素は主に2つ。たんぱく質エネルギー(カロリー)です。ビタミン・カルシウムなどが一緒に摂れると、なおよい。

補食に向いている食品のポイント

  • たんぱく質が含まれる(乳製品・卵・豆腐・大豆製品など)
  • やわらかくて飲み込みやすい(形態が合っていること)
  • 適度なエネルギーがある(100〜200kcal程度が目安)
  • 食欲がない時でも食べやすい量(少量で完結する)

たんぱく質を含む間食の例

食品 特徴
プリン 卵・牛乳ベースでたんぱく質が摂れる。やわらかく飲み込みやすい
ヨーグルト カルシウムとたんぱく質を一緒に摂れる。フルーツを加えると食べやすい
豆腐 少量でたんぱく質が多い。冷奴や白和えでも
卵豆腐 卵・だし風味でおやつ感覚のまま補食になる
牛乳(温めても) 手間なし。たんぱく質・カルシウムの補給に
栄養補助ゼリー エネルギー・たんぱく質が濃縮。食欲がゼロのときの非常用に

市販品と手作り、どちらがいいか

フルーツヨーグルト|高齢者の補食の一例

フルーツヨーグルト|やわらかく、たんぱく質とカルシウムを一度に補える補食の例 ※画像はイメージです

市販品も手作りも、それぞれ使いどころがあります。必ずどちらかでなければならない、ということはありません。

市販品と手作りの比較

市販品 手作り
メリット 手間なし・栄養成分が明記・保存しやすい 食材・甘さ・やわらかさを調整できる・コストが低い
デメリット 甘すぎる・糖分が多い製品も多い。食塩・添加物の確認が必要 都度作る手間がかかる
向いているケース 準備する時間がない・食欲がひどく落ちているとき 毎日の補食・やわらかさを細かく合わせたいとき

市販品を選ぶときのチェックポイント

市販のお菓子やゼリーを間食に使う場合は、パッケージの栄養成分表示を確認する習慣をつけるとよいと思います。

市販品チェックのポイント

  • たんぱく質が3g以上あるか(スナック・飴はほぼゼロ)
  • 食塩相当量が多すぎないか(高血圧や腎臓病がある方は注意)
  • 砂糖・糖類が過剰でないか(糖尿病がある方は主治医に相談)
  • 固さや粒感があるか(嚥下機能に合っているか)

手軽な手作り補食の例

フルーツヨーグルト

材料1人分
プレーンヨーグルト(全脂無糖) 100g
バナナ 30g(約1/3本)
いちご 20g(2粒程度)

栄養価(1人分の目安)

90kcal
エネルギー
4.1g
たんぱく質
13.4g
炭水化物
125mg
カルシウム

ヨーグルトにバナナとイチゴを混ぜるだけ。調理いらずで、なめらかな食感は飲み込みやすく、カルシウムとたんぱく質を同時に補えます。バナナのやわらかい甘みが食欲を引き出しやすい点も、食が細い方に向いています。

きな粉をティースプーン1杯(3g程度)振りかけると、さらにたんぱく質と大豆イソフラボンをプラスできます。


誤嚥・窒息リスクがある間食に注意

嚥下機能が低下している方の間食選びでは、食品の形態と安全性が最優先になります。

高齢者の誤嚥・窒息リスクが高い食品

  • 餅・白玉・団子: やわらかく見えても粘着性が高く、のどに張り付くリスクがある
  • こんにゃくゼリー: 弾力があり、誤嚥・窒息の報告が複数ある
  • ナッツ・豆類(固形のまま): 硬く、粒のまま気道に入るリスクがある
  • クッキー・せんべいの固い端: 口の中でバラバラになり飲み込みにくくなる
  • カップゼリーの滑りやすい固形ゼリー: 一気に滑り込むと窒息につながることも

市販の「嚥下調整食」対応のゼリー・プリン・ムース状食品は、とろみや粘度が学会分類に準拠して設計されているため、嚥下機能が低下している方にはこちらを選ぶ方が安全です。

「やわらかければ大丈夫」とは限りません。やわらかくても粘着性・弾力・液体性によってリスクが異なります。嚥下機能の状態は個人差が大きいため、食形態の判断は主治医や言語聴覚士の評価を優先してください。

とろみをつける工夫

液体が飲み込みにくい方には、市販のとろみ調整食品(でんぷん系・グアガム系)を使って適切なとろみをつける方法があります。ヨーグルトはもともとなめらかですが、水分が多いジュース・牛乳にはとろみが必要になる場合もあります。とろみの程度(中間・濃いとろみ等)は、嚥下調整食学会分類2021に基づいて決めるのが基準です。


間食のタイミングと量のめやす

間食のタイミングと量のめやす

補食として効果的なタイミングは、食事と食事の間、エネルギーが下がりやすい時間帯です。

間食のタイミングのめやす

時間帯 おすすめの理由
午前10時頃 朝食から昼食まで間が空く場合の補充。活動前のエネルギー補給
午後2〜3時頃 昼食から夕食までの間。低血糖が起きやすい時間帯のカバー
夕食が早い場合の夜(就寝2時間前まで) 夕食が17時台と早い施設在宅の方に。ただし就寝直前は避ける

1回の間食量は100〜200kcal程度を目安にします。これ以上になると次の食事の食欲に影響します。前述のフルーツヨーグルト(約90kcal)程度なら食事に影響しにくく、毎日続けやすい量です。

プリンなら1個(市販品は約100〜150kcal程度が多い)で十分。栄養補助ゼリーは商品によって100kcalのもの・200kcalのものと幅があるため、パッケージで確認してから使ってください。


「おやつ」の時間を楽しみに変える

栄養の話ばかりになりましたが、間食は「楽しみの時間」であることも同じくらい大切です。何を食べるかと同じくらい、誰かと一緒に食べること・好きなものを出すことが食欲につながります。

完璧な栄養補給ができなくても、少しだけ口にできた、いつもより表情が明るくなった。それだけでも十分です。補食の目標は「毎回完食」ではなく「毎日少しずつ続けること」。完璧にこだわりすぎず、その日の体調に合わせた柔軟さが長続きの秘訣だと感じています。


おわりに

高齢者の間食は、選び方次第でフレイルや低栄養の予防に役立つ「補食」になります。まずは毎日の間食を、たんぱく質を含む食品(ヨーグルト・プリン・牛乳など)に切り替えるところから始めてみてください。

今日から1日1回、食事でとれなかったたんぱく質を補食で少し足す。この積み重ねが、筋肉を守り、転倒を防ぎ、在宅生活を長く支えることにつながります。

嚥下機能に不安がある場合や、体重が続けて落ちている場合は、まず主治医や担当の管理栄養士へご相談ください。


免責事項・参考基準

本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。高齢者の食事療法は、嚥下機能・基礎疾患・服薬内容・活動量など個人差が大きく、記事の内容が必ずしもすべての方に当てはまるわけではありません。食事内容の変更や栄養量の調整は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。

参考にした基準・出典の系統

出典系統 内容 記事内の使用箇所
日本人の食事摂取基準(2025年版)厚生労働省 75歳以上エネルギー必要量・フレイル予防たんぱく質1.0〜1.2g/kg/日 補食の必要性・たんぱく質目安の節
日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食学会分類2021」 とろみ・形態の区分基準 誤嚥リスク・形態注意の節
日本サルコペニア・フレイル学会「フレイル診療ガイド2023年版」 フレイル・サルコペニアの定義、栄養介入の位置づけ フレイルリスクの節
日本食品標準成分表2020年版(八訂)文部科学省 各食品の栄養値の根拠系統 栄養価グリッドの基礎

※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

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