体重減少とアルブミン|低栄養のサインを受診前に整理する

やわらか介護食

「最近、少し痩せた気がする」。ご家族からそう相談を受けることがあります。本人は「年のせいだから」と気にしていないことも多く、体重や血液検査の数値には、低栄養のサインがそっと出ていることがあります。

低栄養は、ある日突然わかるものではありません。少しずつ進むぶん、家族が「あれ」と思ったときには、すでにしばらく続いていることが多いサインです。今日は、見落としやすいサインを5つに分けて整理します。全部に当てはまらなくても大丈夫です。気になる項目が1つでもあれば、それだけを次の受診のときに伝えてもらえれば十分です。

◆ この記事で扱うこと

  • 体重の変化をどのくらいの目安で見るか
  • 血液検査のアルブミン値の見方
  • 食べ方・動き方に出るサイン
  • 気づいたときに、まず足せる一品

サイン1|体重は「6か月で2〜3kg」の変化を見る

体重は6か月で2〜3kg

体重は、低栄養のサインの中でいちばん確認しやすいものです。厚生労働省の高齢者向け生活機能チェック(基本チェックリスト)には、「6ヵ月間で2〜3kg以上の体重減少がありましたか」という項目があります。これは介護予防の現場で栄養状態を把握するために使われている、代表的な物差しの一つです。

体重計に乗る習慣がない場合は、いつも着ているズボンのウエストや、指輪、時計のベルトの穴の位置でも気づけることがあります。ここで見たいのは、数日のむくみや便通による上下ではなく、数週間から数か月かけての傾き。一度の数字だけで判断せず、できれば同じ時間帯・同じ服装で、月に1回くらい記録しておくと比べやすくなります。

サイン2|血液検査のアルブミン値が3.8を下回っていないか

アルブミン3.8が目安

健診や通院で血液検査を受ける機会があれば、「Alb」または「アルブミン」の欄も見てみてください。先ほどの基本チェックリストが定める「栄養改善」の対象基準では、血清アルブミン値3.8g/dl以下が一つの目安とされています。

ここは誤解しやすいところですが、この数値は病気の診断基準ではなく、介護予防の現場で「栄養改善のサポートを検討したほうがよいか」を判断するためのスクリーニングの目安です。実際の評価や治療方針を決めるのは、あくまで主治医です。数値が3.8を下回っていた、あるいは前回の検査より下がっていたときは、その結果を持って一度相談してみる、というくらいの受け止め方でよいと思います。一回の数値よりも、複数回の推移を並べて見るほうが変化に気づきやすくなります。

サイン3|噛みにくさやむせが増えていないか

噛みにくさ・むせ

同じ基本チェックリストには、「半年前に比べて固いものが食べにくくなったか」「お茶や汁物でむせることがあるか」という項目も並んでいます。分類としては栄養ではなく口腔の項目にあたりますが、噛む力や飲み込む力が落ちると、自然と食べる量そのものが減っていくため、低栄養のサインとしても一緒に見ておきたいところです。

食事の後半だけご飯を残すようになった、肉より豆腐や卵を選ぶ回数が増えた、食事の時間が以前より長くなった。こうした変化は、本人よりも一緒に食卓を囲む家族のほうが気づきやすいものです。

サイン4|歩く・立ち上がる動作がつらくなっていないか

歩く・立ち上がる動作

意外に感じるかもしれませんが、食べる量が減ると、体力や筋肉量にもサインが出ます。基本チェックリストの運動に関する項目には、「階段を手すりなしで昇っているか」「椅子から何もつかまらずに立ち上がっているか」「15分くらい続けて歩けているか」があります。これらは本来は運動機能の項目ですが、低栄養が進むと同じタイミングで当てはまりやすくなる、いわば隣り合わせのサインです。

買い物の荷物を持つのがつらそうになった、階段で手すりを使う頻度が増えた。こうした変化を「年齢だから仕方ない」で終わらせず、食事量の変化と合わせて振り返ってみると、見え方が変わることがあります。

サイン5|食事の中身そのものが減っていないか

最後は、いちばん直接的なサインです。品数が減った、主菜だけが小さくなった、同じものを買っているのに残す量が増えた。こうした変化は、体重やアルブミン値に出るよりも先に、食卓の上に現れることがよくあります。

食が細くなっている方にエネルギーやたんぱく質を無理なく足す工夫は、食が細い高齢者のエネルギー確保|少量で栄養を摂る5つの工夫のほうで詳しく扱っています。今日はまず、気づいたときにすぐ試せる一品を紹介します。

気づいたら、まず一品足す発想で

だし巻き卵でたんぱく質を

5つのうちどれかに心当たりがあっても、いきなり食事を大きく変える必要はありません。まずは一品、たんぱく質の多いものを足すところから始めれば十分です。卵は、少量でもたんぱく質がしっかり摂れて、やわらかく仕上げやすい食材です。

だし巻き卵

だし巻き卵|卵1個分でも主菜になる一品 ※画像はイメージです

材料1人分
鶏卵(全卵) 100g(Mサイズ約2個)
かつおだし(荒節) 20g
こいくちしょうゆ 3g
調合油 4g
  1. 卵を溶き、だしとしょうゆを加えて混ぜる。裏ごしすると口当たりがなめらかになる。

  2. 卵焼き用の鍋に油を薄くひき、卵液を数回に分けて流し入れながら巻く。

  3. 巻き終わったら形を整え、粗熱を取ってから食べやすい厚さに切る。

  4. 飲み込みにくい方は、しっとり仕上げて厚めに切ると口の中でまとまりやすくなる。

◆ 栄養価(1人分の目安)

180kcal
エネルギー
12.5g
たんぱく質
14.2g
脂質
0.9g
食塩相当量

※1食あたりの目安です。

卵2個分でたんぱく質が12.5g摂れる計算です。主菜をもう一品作る余力がない日でも、これ1品を汁物や粥に添えるだけで、その日のたんぱく質量を底上げできます。味の濃さが気になる場合は、しょうゆを控えてだしを増やすと調整しやすくなります。

おわりに

5つのサインを並べましたが、全部を覚えておく必要はありません。今日読んで、気になった項目が1つでもあれば、それだけをメモして次の受診のときに伝えてください。それで十分な情報になります。

低栄養は、原因も対処も人によって違います。持病や飲んでいる薬、噛む力の状態によって、優先して見るべきところも変わってきます。ここで整理したことは、あくまで気づくための入り口です。判断そのものは、主治医や担当の管理栄養士と一緒に進めていってください。


免責事項・参考基準

本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養診断の代わりではありません。低栄養の評価や治療方針は、基礎疾患・服薬内容・嚥下機能・血液検査の結果によって個別に決まります。気になるサインがあれば、自己判断で食事量や内容を大きく変える前に、必ず主治医および担当管理栄養士に相談してください。

参考にした基準・出典の系統

出典系統 内容 記事内の使用箇所
厚生労働省「介護予防マニュアル(概要版)」(2009年3月)基本チェックリスト 体重減少(6ヵ月で2〜3kg以上)・BMI18.5未満・血清アルブミン値3.8g/dl以下という栄養改善の判定基準、および口腔・運動関連項目 サイン1〜4
日本食品標準成分表2020年版(八訂)文部科学省 卵・調味料の栄養値の根拠系統 栄養価グリッドの基礎

※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

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