油の棚とマーガリンの棚を、同じ物差しで見る

スーパーでは、食用油はたいてい調味料コーナーの一角に、マーガリンは乳製品売り場の近くに置かれています。棚の場所は離れていますが、パッケージの裏側で見るところは、実はほとんど同じです。
どちらも主な成分は油脂で、栄養成分表示には「脂質」の欄があり、原材料名には油の種類が書かれています。健診で脂質を指摘されてから油売り場の前で足が止まるようになった、という声をよく聞きますが、見る場所を知っていれば迷う時間はかなり短くなります。
脂肪酸は3つに分かれて書かれている

栄養成分表示の「脂質」という1行の中身は、実はひとつではありません。飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸という3つの脂肪酸の集まりでできています。
- 飽和脂肪酸:常温で固まりやすい性質を持つ脂肪酸。バターやラード、肉の脂身に多く含まれます
- 一価不飽和脂肪酸:オリーブ油やなたね油に多く含まれ、常温でも液体のまま
- 多価不飽和脂肪酸:サラダ油や魚の油に多く含まれ、こちらも常温で液体のまま
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、高LDL-C血症の食事療法として飽和脂肪酸を摂取エネルギー比率7%未満に抑え、一価・多価不飽和脂肪酸に置き換えることが挙げられています。「油を全部減らす」のではなく、「固まりやすい脂肪酸から、液体のままの脂肪酸に置き換える」という発想です。
ここで一つ知っておきたいのが、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸の内訳は、栄養成分表示の中では任意の表示項目だということです。書いてある商品と、書いていない商品があります。書かれていない場合は、原材料名の並びから油の種類を読み取ることになります。
「トランス脂肪酸ゼロ」と書けるからくり

マーガリンの棚では「トランス脂肪酸0g」という表示をよく見かけるようになりました。ここで立ち止まってほしいのは、「0g」という表示が、まったく含まれていないことの証明ではない場合があるという点です。
農林水産省は、諸外国の一部が加工食品のトランス脂肪酸に表示義務や濃度の上限値を設けているのに対し、日本では表示の義務化や上限値の設定ではなく、企業の自主的な低減の取り組みを軸にしていることを説明しています。国内のマーガリン・ショートニングは、この自主的な取り組みによって、以前と比べてトランス脂肪酸の量が大きく減った商品が多くなりました。
ではトランス脂肪酸がどこから来るかというと、液体の油を固形に近づける加工の過程で生まれます。ここで役に立つのが原材料名です。
★ 原材料名で見ておきたい言葉
「加工油脂」「精製加工油脂」「ショートニング」といった言葉は、油を加工して固さを調整した油脂であることを示します。以前は「部分水素添加油脂(硬化油)」という表記もトランス脂肪酸の目印としてよく知られていました。今はこの表記自体が減っていますが、輸入食品や一部の焼き菓子では見かけることがあります。原材料名の中ほどから後ろにこうした言葉があるかどうかを、一度確かめる習慣をつけておくと安心です。
油の種類別に脂肪酸の内訳を並べてみる

家庭でよく使う油とマーガリン・バターを、含まれる脂肪酸のタイプで並べてみます。数値は商品ごとに幅があるため、ここでは「どの脂肪酸が中心か」「常温でどんな状態か」で比べます。
◆ 油・マーガリン・バターの脂肪酸タイプ比較
| 種類 | 中心となる脂肪酸 | 常温での状態 |
|---|---|---|
| オリーブ油・なたね油 | 一価不飽和脂肪酸 | 液体 |
| 調合油・大豆油・コーン油 | 多価不飽和脂肪酸 | 液体 |
| パーム油・やし油(ココナッツオイル) | 飽和脂肪酸 | 半固形〜固形 |
| バター | 飽和脂肪酸 | 固形 |
| マーガリン・ファットスプレッド | 原料の油の配合により幅がある | 固形〜半固形 |
パーム油とやし油は、名前が似ているので混同されやすいのですが、原料の違う別の油です。パーム油はアブラヤシの果肉から、やし油はココヤシの実(ココナッツ)から作られます。共通しているのは、どちらも植物性でありながら飽和脂肪酸が中心だという点です。市販のお菓子やパン、揚げ物の油に「植物油脂」とだけ書かれている場合、その中身がパーム油であることも少なくありません。植物性だから軽いはず、と決めつけずに中身を見る必要がある理由がここにあります。
マーガリン・バター・ファットスプレッドの位置づけ
3つとも見た目は似ていますが、原材料名を見ると立ち位置の違いが分かります。バターは乳脂肪からできているのに対し、マーガリンは植物油を中心に作られています。ファットスプレッドは、マーガリンよりも油脂の割合を減らし、その分水分を増やした製品を指す言葉として使われています。
脂質の量だけで比べると、ファットスプレッドのほうが少なく見えることが多いのですが、1回に塗る量を増やしてしまえば差は縮みます。種類を選ぶことと同じくらい、パンに塗る量を目で覚えておくことも意味があります。
使う場面で決める

油の種類は、1本にすべて頼ろうとすると選びにくくなります。場面ごとに使い分ける発想のほうが、続けやすいと感じています。
- 炒める:熱に強く量を把握しやすいなたね油・調合油が扱いやすい種類です
- 揚げる:油の吸収量そのものが多くなる調理法なので、種類より「揚げる頻度」のほうに気を配りたいところです
- かける:ドレッシングや和え物には、加熱しないオリーブ油やごま油の風味を生かせます
- 塗る:パンに塗るバター・マーガリンは、種類選びよりも「いつもより少なめの量にする」ほうが変化を感じやすいです
実例の一品:油を計って作る野菜炒め
種類を選ぶことと並んで効くのが、鍋に入れる油の量を目で見て把握することです。

野菜炒め|油を計量スプーンで量ってから炒めた一皿 ※画像はイメージです
キャベツ・にんじん・ピーマン・もやしなど、家にある野菜を油小さじ2程度でさっと炒め合わせます。フライパンの上で油をそのまま回しかけると、思っているより多めに入ってしまいがちです。計量スプーンで量ってから鍋に入れるだけで、油の使用量を自分の目で確認できるようになります。調合油は大さじ1(12g)でおよそ106kcal、脂質にして12gに相当します。小さじ1ならこの3分の1程度と考えると、目分量の感覚がつかみやすくなります。
おわりに
油もマーガリンも、パッケージの裏側には共通して脂肪酸の情報が隠れています。飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸か、原材料名に加工油脂の言葉があるかどうか。この2点さえ押さえておけば、棚の前で迷う時間はぐっと減ります。
次に買い物に行くとき、まずは今使っている油かマーガリンをひとつ手に取って、裏側の表示を見るところから始めてみてください。種類をすべて入れ替えなくても、見る習慣がつくだけで選び方は変わってきます。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。脂質異常症の食事療法は、その方の脂質の数値・病型・合併症・服薬内容によって個別に決まります。油やマーガリンの選び方、脂質やエネルギーの目標量の変更は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」 | 高LDL-C血症における飽和脂肪酸の目標(摂取エネルギー比率7%未満)と一価・多価不飽和脂肪酸への置換 | 「脂肪酸は3つに分かれて書かれている」節 |
| 農林水産省「トランス脂肪酸に関する情報」 | 日本ではトランス脂肪酸の表示義務化・上限値設定ではなく企業の自主的低減が中心という現状 | 「トランス脂肪酸ゼロ」節 |
| 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 | 調合油100gあたりのエネルギー・脂質(大さじ1=12g換算の基礎) | 「実例の一品」節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

