売り場の前で、しばらく立ち尽くすことがあります。
「低たんぱく」「たんぱく調整」と書かれた棚には、パックのごはん、レトルトのおかず、粉状のもの、ゼリー、お菓子までが並んでいます。パッケージには 1/25 だとか 1/35 だとかの数字。どれも似て見えて、値段だけがはっきり違う。通販の一覧画面でも事情は同じで、スクロールしているうちに、結局その日は何も買わずに閉じてしまったりします。
この記事では、棚ごとに何を見れば決められるかを順番に書いていきます。特定の商品を勧めるものではありません。手に取ったものを自分で判断できるようになるほうが、長い目で見て役に立つと思うからです。
かごに入れる前に、見る場所を3つ決めておく

商品の裏面を全部読んでいたら日が暮れます。見るのは次の3つだけで足ります。
◆ 栄養成分表示で見る3点
| 見る項目 | 何のために見るか |
|---|---|
| たんぱく質 | 1日の枠のうち、この1品で何g使うかを知るため |
| エネルギー | 置き換えたことでエネルギーまで減っていないか確かめるため |
| 食塩相当量 | 1日6.0g未満の枠のうち、この1品が占める分を知るため |
このとき、いちばん間違えやすいのが単位です。「100gあたり」なのか「1食(1パック)あたり」なのかを先に確かめてください。100gあたりで書かれている商品を1パック180g食べれば、表示の1.8倍になります。ここを読み違えると、せっかく計算しても合わなくなります。
カリウムやリンの制限を受けている方は、この3つに加えてその表示も見ます。たんぱく調整食品には表示されているものが多いのですが、書かれていない商品もあります。
主食の棚|置き換えて浮いた枠を、どこに回すか

低たんぱくごはんの考え方は、たんぱく質を減らすことそのものではありません。主食で使っていた枠を空けて、そのぶんを主菜に回すことにあります。
ふつうのごはんは、日本食品標準成分表の値で100gあたりたんぱく質2.5g、エネルギー156kcalです。茶碗にふつうに盛って180gなら、たんぱく質はおよそ4.5g、エネルギーはおよそ281kcalになります。
3食ぶんだと、ごはんだけでたんぱく質が13gほど。標準体重50kgの方がG3bで0.6〜0.8g/kgの指示を受けているとすると1日30〜40gですから、主食が枠の3分の1近くを占めている計算です。
低たんぱくごはんのパッケージにある 1/25 や 1/35 は、たんぱく質をふつうのごはんの25分の1、35分の1程度に抑えたという意味の表示です。実際の量は商品ごとに違うので、必ず裏面の数字で確認してください。
ここで同時に見てほしいのがエネルギーです。低たんぱくごはんは、たんぱく質を減らしてもエネルギーは落とさないように作られているものが多いのですが、商品によって差があります。たんぱく質もエネルギーも減ってしまうと、体重が落ちる方向に働きます。
味と食感は、ふつうのごはんと同じではありません。粘りが少なく感じる方が多いです。いきなり3食を置き換えると続かないことがあるので、まずは夕食の1食から試して、口に合うかどうかを確かめるくらいがちょうどいいと思います。
おかずの棚|たんぱく質と食塩を、必ずセットで見る

レトルトの主菜や惣菜は、調理の負担がいちばん減るところです。ただ、ここで見落としやすいのが食塩です。
たんぱく質を抑えてある商品でも、味が薄いと食べにくいため、しっかり味がついているものがあります。1食で食塩相当量が2gを超えていれば、1日6.0g未満の枠のうち3分の1をその1品で使うことになります。他の2食を薄味にして帳尻を合わせるか、量を半分にして残りは翌日に回すか、どちらかの手当てが要ります。
減塩そのものの進め方は腎臓病と塩分|むくみ・血圧に配慮した減塩のすすめに書いていますので、そちらも参考にしてください。
もうひとつ、原材料表示も一度は見ておく価値があります。リンの管理が始まっている方は、加工の過程で加えられるリン酸塩の影響を受けやすいためです。この話は腎臓病とリン|加工食品・乳製品との付き合い方にまとめました。
エネルギーを足す棚|たんぱく質をほとんど含まない製品

粉状のもの(粉あめなど)、ゼリー、クッキーやドーナツのようなお菓子タイプ。この棚に並ぶのは、たんぱく質をほとんど含まずにエネルギーだけを足すための製品です。
体重が落ちてきている方、食が細くなってきた方には、選択肢のひとつになります。たんぱく質制限を続けているとエネルギーまで足りなくなりやすく、そうなると体は自分の筋肉を分解してしまいます。それを防ぐ役割です。
ただし、これは「体重が減っている」という前提があってのものです。体重が保てている方が習慣で足すと、今度は増えすぎることがあります。使い始めるかどうかは、主治医や担当の管理栄養士に一度確認してからにしてください。
エネルギーを食事の側から足す方法は腎臓病でもエネルギーは確保|たんぱく質制限中に不足させない食べ方にも書いています。
市販品に頼らずにエネルギーを足す一品
揚げる調理は、たんぱく質を増やさずにエネルギーを足せる方法のひとつです。なすの天ぷらだと、こうなります。

なすの天ぷら|なす80gを薄い衣で揚げたもの ※画像はイメージです
◆ 栄養価(1人分の目安)
たんぱく質は1.3gですから、主菜の枠をほとんど使いません。それで130kcal ほど確保できます。天つゆをたっぷりつけると食塩が一気に増えるので、少量を小皿に取るか、レモンを絞るだけにするのがおすすめです。
市販のたんぱく調整食品と、こうした家庭の一品。どちらかに寄せる必要はなくて、負担の大きいところだけ市販品に任せるという使い方でかまいません。
値段と、続けられる範囲

低たんぱくごはんは、ふつうのパックごはんより価格が高くなるのが一般的です。3食すべてを置き換えると、月の食費への影響は小さくありません。
最初から全部を置き換えなくていいと思います。たんぱく質の枠がいちばん厳しくなるのは、主菜をしっかり食べたい食事です。多くの場合それは夕食なので、まず夕食のごはんだけを置き換えて、他は普通のごはんの量で調整する。それで枠が収まるなら、無理に増やす必要はありません。
かごを出る前に、ひとつだけ見直すとしたら「今日買うものが1週間で使い切れる量かどうか」です。まとめ買いすると割安になりますが、口に合わなかったときに残ります。最初の1回は少量で試すのが結局いちばん安く済みます。
おわりに
たんぱく調整食品は、制限を守るための道具です。使わなければいけないものでも、使えば安心というものでもありません。
今日のところは、次の買い物で低たんぱくごはんを1食分だけかごに入れてみる。それで様子を見て、続けられそうなら増やす。その順番で十分だと思います。
どの商品をどれくらい使うかは、いまの検査値と指示された枠によって変わります。迷ったら、パッケージの写真を撮って次の受診に持っていってください。実物があると話が早いです。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。腎臓病(CKD)の食事療法は、そのステージ・合併症・服薬内容・血液検査の数値によって個別に決まります。たんぱく調整食品の使用の可否・量、たんぱく質やエネルギーの目標量の変更は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」(2023年版)/実務版『CKD診療ガイド2024』 | CKDステージ別たんぱく質の目安(G3b以降 標準体重1kgあたり0.6〜0.8g/日)、食塩相当量の目安(1日3.0g以上6.0g未満) | 「主食の棚」節・「おかずの棚」節 |
| 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」 | 水稲めし・精白米(うるち米)100gあたりのエネルギー156kcal・たんぱく質2.5g | 「主食の棚」節 |
| 日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」 | たんぱく質制限時に十分なエネルギーを確保する考え方 | 「エネルギーを足す棚」節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

