検査結果の紙に、eGFR 52 と印字されていたとします。
この数字、実際のところどのくらいなのでしょうか。低いことは何となく分かる。でも、明日から何を変えればいいのかまでは書いてありません。診察室では血圧と薬の話で時間が過ぎてしまい、食事のことを聞きそびれたまま帰ってきた、という話もよく聞きます。
今日は、この数字が何を指しているのかと、次の受診までに手元で整理しておけることを書きます。数値を自分で判定するための記事ではありません。主治医に食事の相談を持ちかけるとき、話が早く進むように準備しておくための整理です。
52という数字は、何をあらわしているのか

eGFRは「推算糸球体濾過量」の略で、腎臓が1分間にどれだけの血液をこしとれているかを推し量った値です。単位はmL/分/1.73㎡ですが、日常的にはこの単位は省いて数字だけで呼ばれます。
計算のもとになっているのが、血液検査のクレアチニンです。クレアチニンは筋肉が動いたあとに出る老廃物で、腎臓から尿へ捨てられます。腎臓のこす力が落ちると捨てきれず、血液の中に残る。だから値が上がります。
ただ、クレアチニンには少し扱いにくいところがあります。筋肉の量に左右されるのです。筋肉の多い方では高めに、筋肉の少ない方や高齢の方では低めに出やすい。同じクレアチニン1.0でも、体格の違う二人では意味が変わってしまいます。
そこで、クレアチニンの値に年齢と性別を組み込んで補正したものがeGFRです。個人差の大きい数字を、比べられる形に直したもの、と考えると分かりやすいと思います。100点満点のテストではありませんが、数字が大きいほど余力があり、小さいほど余力が減っている、という向きは共通です。
区分に置き換えると、どのあたりに立っているか

eGFRは、腎臓の働きの程度を示すG1からG5の区分に対応しています。数字そのものより、この区分のどこにいるかで話が進むことが多いので、並べておきます。
◆ eGFRとGFR区分の対応
| 区分 | eGFR | 腎臓の働きの程度 |
|---|---|---|
| G1 | 90以上 | 正常または高値 |
| G2 | 60〜89 | 正常または軽度低下 |
| G3a | 45〜59 | 軽度〜中等度低下 |
| G3b | 30〜44 | 中等度〜高度低下 |
| G4 | 15〜29 | 高度低下 |
| G5 | 15未満 | 末期腎不全 |
冒頭の52なら、G3aの範囲に入ります。
ここで気をつけたいことがひとつ。腎臓の状態は、eGFRだけで決まるわけではありません。尿にたんぱくが出ているかどうか(尿たんぱく、あるいは尿アルブミン)を組み合わせて評価します。eGFRが同じでも、尿たんぱくが多い方は経過の見方が変わってきます。
検査結果の紙で、eGFRの数字だけを追いかけて安心したり落ち込んだりしがちですが、尿の項目もセットで見ておくと、診察のときの話がかみ合いやすくなります。
一度の数字で、決めてしまわない

もうひとつ知っておいてほしいのが、eGFRは日によって動くということです。
前の日の水分が少なかった、汗をたくさんかいた、その朝に強い運動をした、飲んでいる薬が変わった。こうしたことで数字はいくらか上下します。体調をくずしたあとの採血で、一時的に大きく下がることもあります。
だから、腎臓の働きが本当に落ちているかどうかは、3か月以上にわたって続いているかで判断されます。1回の結果で慢性腎臓病と決まるわけではありませんし、逆に1回良かったから解決した、ということでもありません。
外来で「今回はちょっと下がりましたね、次で見ましょう」と言われることがあるのは、この見方によります。次の採血まで何もしなくていいという意味ではありませんが、その1回の数字だけで食事を極端に変えるのは、あまり勧められません。
食事の話が変わるのは、どのあたりからか

では、どの段階で何の話になるのか。順番のイメージを持っておくと、聞きたいことがはっきりします。
食塩は、区分にかかわらず早い段階から出てくる話です。血圧を保つことが腎臓を守ることにつながるためで、日本腎臓学会のガイドラインでは1日3.0g以上6.0g未満が目安とされています。下限があるのは、減らしすぎもよくないからです。3g未満まで切り詰めると血圧が下がりすぎ、かえって腎臓への血流が落ちることがあります。
たんぱく質の制限は、もう少し進んだ段階からの話になります。G1・G2では制限しません。G3aで標準体重1kgあたり0.8〜1.0g、G3b以降で0.6〜0.8gが目安です。ただしこれは一般的な数字で、実際に制限するかどうか、どこまで下げるかは主治医の判断になります。心配だからと先回りして自己流で減らすと、エネルギーまで足りなくなり、体重や筋肉が落ちてしまうことがあります。
カリウムは、さらに個別性が高い項目です。血液検査のカリウム値が上がってきた方に、必要に応じて制限がかかります。区分が進んだからといって全員が野菜を制限するわけではありません。
つまり、eGFRが下がりはじめた段階でまず手をつけられるのは、多くの場合が食塩とエネルギーの確保です。たんぱく質を減らす方向の話は、指示が出てからで間に合います。
たんぱく質を増やさずに、エネルギーを足せる一品
たんぱく質の量を変えずにエネルギーだけ足したいとき、油や砂糖を含む副菜が役に立ちます。定番のコールスローもそのひとつです。

コールスロー|キャベツとにんじんを、マヨネーズと酢・砂糖で和えた副菜 ※画像はイメージです
◆ 栄養価(1人分の目安)
キャベツ80gとにんじん15gを細切りにして、マヨネーズ10gと米酢5g、砂糖3gで和えるだけです。たんぱく質は1皿で1.2gほどなので、主菜の枠をほとんど使いません。それでいて100kcalを少し超えます。
味つけに塩を足さず、酢と砂糖で輪郭をつけるのがコツです。ドレッシングを追加するとそのぶん食塩が増えるので、和えたらそのまま出してしまいます。カリウム制限の指示が出ている方は、キャベツとにんじんを切ってから水にさらすか、さっと下ゆでしてから和えてください。
受診の前に、紙1枚にまとめておく

診察の時間は限られています。話したいことがまとまっていないと、たいてい薬の確認で終わってしまいます。次の受診までに、次の3つだけ書き出しておくと、食事の相談に入りやすくなります。
★ 受診前に書き出す3つ
1. 数値の並び 直近3回ぶんのeGFR・クレアチニン・尿たんぱくを、日付とともに横に並べます。1回だけの値より、上がっているのか下がっているのかが分かるほうが話が早いです。
2. 実際に食べているもの 平日2日と休日1日ぶんの食事を、ざっくりでかまわないので書きます。写真を撮っておくだけでも十分です。理想ではなく、実際に食べたものを書くのがだいじです。
3. いま困っていること1つ 「外食が週3回あってどうすればいいか」「味が薄くて食が進まない」など、具体的に1つ。全部聞こうとすると、かえって焦点がぼやけます。
このうち3つめが、いちばん効きます。「食事はどうすればいいですか」という聞き方だと一般論が返ってきやすいのですが、困っている場面がひとつ具体的に出ていると、その場に合わせた答えが返ってきます。
栄養指導の枠を取ってもらえるかどうかも、このときに聞いておくといいと思います。診察のなかで食事の話まで詰めるのは、時間的にどうしても難しいことがあります。管理栄養士と話す時間が別に取れるなら、そちらのほうがゆっくり相談できます。
減塩をどう進めるかは腎臓病と塩分|むくみ・血圧に配慮した減塩のすすめに、エネルギーの確保は腎臓病でもエネルギーは確保|たんぱく質制限中に不足させない食べ方にまとめています。たんぱく質の目安量の考え方は腎臓病とたんぱく質|摂りすぎないコツと適量のほうが詳しいです。
おわりに
eGFRは、覚えて眺めるための数字ではありません。次に何を相談するかを決めるための手がかりです。
今日は、検査結果の紙を1枚探して、直近3回のeGFRを並べて書くところまでで十分です。食事を変えるのはそのあとで間に合います。数字が動くたびに一喜一憂すると疲れてしまうので、半年くらいの幅で眺めるつもりでいるほうが、結果的に長く続きます。
分からないことは、遠慮なく主治医や担当の管理栄養士に投げてしまってください。一人で読み解こうとしなくて大丈夫です。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。腎臓病(CKD)の食事療法は、そのステージ・合併症・服薬内容・血液検査の数値によって個別に決まります。検査値の解釈および食事内容・栄養量の変更は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」(2023年版)/実務版『CKD診療ガイド2024』 | GFR区分(G1〜G5)とeGFRの対応、食塩相当量の目安(1日3.0g以上6.0g未満・過度な制限は非推奨)、CKDステージ別たんぱく質の目安(G3a 0.8〜1.0g/kg、G3b以降 0.6〜0.8g/kg) | 「区分に置き換えると、どのあたりに立っているか」節・「食事の話が変わるのは、どのあたりからか」節 |
| 日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」 | 十分なエネルギー確保の考え方(たんぱく質を制限する場合のエネルギー不足への注意) | 「食事の話が変わるのは、どのあたりからか」節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

