腎臓病でもエネルギーは確保|たんぱく質制限中に不足させない食べ方

腎臓病サポート

たんぱく質を減らすように言われてから、なんとなく体重が落ちてきた。おかずの量を控えているだけなのに、そう感じている方は少なくありません。

実はこれ、たんぱく質を真面目に減らした方ほど起きやすい現象です。たんぱく質制限とエネルギー確保は、本来セットで考えるものだからです。片方だけを頑張ると、もう片方が置き去りになってしまいます。

この記事では、なぜこの2つがセットなのか、そのしくみから確認したうえで、1日に必要なエネルギーの目安の計算のしかた、削ったたんぱく質の分を無理なく埋める食べ方までを順に見ていきます。


たんぱく質を減らすと、エネルギーも一緒に落ちやすい

たんぱく質制限とエネルギーの関係

たんぱく質を含む食品は、肉・魚・卵・豆腐といった主菜だけではありません。ご飯やパンなどの主食にも含まれていて、1日分を合わせると意外な量になります。ここを減らそうとすると、意識していなくても食事の量そのものが減り、結果としてエネルギー(カロリー)まで一緒に落ちてしまうことがよくあります。

これは見た目以上に厄介な問題です。エネルギーが足りない状態が続くと、体は不足分を補おうとして、自分の筋肉を分解してエネルギーに変え始めます。筋肉が分解されると、そこから老廃物(窒素化合物)が出てきます。せっかくたんぱく質を減らして腎臓の負担を軽くしようとしたのに、筋肉の分解で同じような老廃物が体の中から出てきてしまう。これでは本末転倒です。

日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」でも、たんぱく質制限を行う際は十分なエネルギーの確保が必要で、サルコペニア(筋肉が減っていく状態)やフレイル(心身の衰え)、PEW(たんぱく質・エネルギー消耗状態)の発症に十分注意するべきだとされています。より厳しいたんぱく質制限を行う場合ほど、腎臓の専門医と管理栄養士による継続的な指導が欠かせない、という文脈で書かれている一文です。

つまり「たんぱく質を減らす」ことと「エネルギーを確保する」ことは、片方だけを守ればいい話ではありません。両方をセットで考えて、初めて食事療法として成り立ちます。


1日に必要なエネルギーの目安を計算してみる

エネルギーの目安

食事療法基準では、エネルギーの目安は標準体重1kgあたり25〜35kcal/日とされていて、これはステージが進んでも変わりません。標準体重は身長からBMI22で計算した体重を使うのが基本です。

たとえば身長1.65mの方なら、標準体重は1.65×1.65×22で、およそ60kgになります。この標準体重60kgに当てはめると、1日のエネルギーの目安はこうなります。

標準体重60kgの場合の1日の目安

エネルギー 25〜35kcal × 60kg = 1,500〜2,100kcal/日
たんぱく質(ステージ3b以降) 0.6〜0.8g × 60kg = 36〜48g/日

出典: 日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」表1(p.11)をもとに標準体重60kgで筆者計算。

数字だけ見ると、エネルギーの幅がかなり広いことに気づきます。同じ標準体重でも、年齢や体を動かす量によってこの範囲のどのあたりを目指すかは変わってきます。実際の指示量は、体重・活動量・血液検査の結果を見た主治医や担当の管理栄養士が決めるものなので、この計算はあくまで「自分の食事量がだいたいどのくらいの位置にあるか」を掴むための目安として使ってください。

たんぱく質は36〜48gという幅の中に収めながら、エネルギーは1,500〜2,100kcalを満たす。この「引き算と足し算を両方やる」という感覚が、ここから先の工夫につながります。


でんぷん・油・砂糖という3つの道具

エネルギーを足す3つの道具

たんぱく質をほとんど含まずにエネルギーだけを足せる食材は限られています。実用的なのは、でんぷん・油・砂糖の3つです。

でんぷん(片栗粉・くず粉・じゃがいもでん粉など)は、とろみをつけたり、揚げ衣に使ったりすることで料理のかさとエネルギーを増やせます。たんぱく質はごくわずかしか含まれていません。

油は少量でエネルギーが高く、炒め物やドレッシングで自然に取り入れやすい食材です。揚げ物・素揚げ・多めの油で炒めるといった調理法を選ぶだけで、同じ食材でもエネルギーを底上げできます。

砂糖・はちみつ・みりんといった甘味も、たんぱく質をほぼ含まないエネルギー源です。煮物の味付けや、間食の甘味として活用できます。

この3つに共通するのは、たんぱく質を増やさずにエネルギーだけを積み増せるという点です。主菜のたんぱく質量を守りながらエネルギー不足を防ぐには、この3つの道具をどこで使うかを考えるのが近道になります。

日常で取り入れやすい場面

  • 汁物や炒め煮に片栗粉でとろみをつける
  • 野菜炒めの油を気持ち多めにする
  • 煮物の甘みを砂糖・みりんでしっかりつける
  • 間食にでんぷん・砂糖を使った和菓子を1品はさむ

間食で足す:わらび餅風

わらび餅風

主食や主菜だけでエネルギーを積み増そうとすると、たんぱく質も一緒に増えてしまいがちです。ここで役に立つのが、でんぷんと砂糖だけでできる間食です。じゃがいもでん粉を使った、わらび餅風の一品を紹介します。

材料1人分
じゃがいもでん粉 20g
上白糖 10g
  1. じゃがいもでん粉と上白糖を鍋に入れ、でん粉の3〜4倍程度の水を少しずつ加えながらよく溶く。

  2. ダマが残らないように混ぜたら、弱火にかけながらゴムべらで絶えずかき混ぜる。

  3. 白っぽかった液が透明感のあるとろりとした状態に変わり、ひとまとまりになるまで練り続ける。

  4. 火からおろし、バットや器に薄く広げて冷ます。粗熱が取れたら食べやすい大きさに切り分ける。

栄養価(1人分の目安)

106.7kcal
エネルギー
0.02g
たんぱく質
7mg
カリウム
8mg
リン

わらび餅風

わらび餅風(じゃがいもでん粉・上白糖) ※画像はイメージです

たんぱく質はほぼゼロに近く、カリウムもリンもごくわずかです。100kcal前後のエネルギーを、たんぱく質・カリウム・リンをほとんど増やさずに足せるという点で、間食として使いやすい一品です。

きな粉や黒みつをかけて食べたくなるところですが、きな粉は大豆からできているのでたんぱく質・カリウム・リンが加わります。かける場合の量や頻度は、主治医・担当管理栄養士に確認しておくと安心です。


カリウム・リンを増やさずに足すための注意

エネルギーを足す食品を選ぶときに見落としやすいのが、カリウムとリンです。同じくらいのエネルギーでも、食材によってこの2つの量はかなり違います。

同じくらいのエネルギーでも、カリウム・リンはこれだけ違う(各1人分)

料理 エネルギー たんぱく質 カリウム リン
わらび餅風(でん粉20g・砂糖10g) 106.7kcal 0.02g 7mg 8mg
もち(切りもち1個・50g) 111.5kcal 2.0g 16mg 11mg
なすの素揚げ(べいなす80g) 141.6kcal 0.8g 176mg 20.8mg
さつまいもの甘煮(さつまいも60g・砂糖8g・みりん5g) 118.9kcal 0.7g 288.5mg 28.6mg

4品とも、エネルギーは100〜140kcal台でそう変わりません。ですがカリウムだけを見ると7mgから288.5mgまで、実に40倍以上の差があります。なすの素揚げやさつまいもの甘煮は、野菜・いも由来の食材なのでカリウムが多くなります。

だからといって、さつまいもや野菜を食べてはいけないわけではありません。食事療法基準でも、たんぱく質の制限によってカリウムも自然と抑えられるため、野菜や果物の摂取制限や茹でこぼしを一律に行う必要はないとされています。カリウム制限の段階にある方は、量や頻度をどのくらいにするか、主治医・担当管理栄養士に確認しながら取り入れるとよいでしょう。

エネルギーを足す食品を選ぶときは、「エネルギーが同じくらいなら、カリウム・リンが少ない方を優先する」という視点を持っておくと、間食や副菜選びで迷いにくくなります。


おわりに

たんぱく質を減らすことばかりに気を取られていると、エネルギー不足に気づかないまま体重が落ちていくことがあります。削った分は、でんぷん・油・砂糖でこまめに埋め合わせる。これだけでも、体への負担のかかり方はだいぶ変わってきます。

一度にすべてを変える必要はありません。まずは間食を1つ、エネルギーを足せるものに置き換えてみる。それくらいの一歩から、焦らずぼちぼち続けていきましょう。ひとりで抱え込まず、迷ったときは主治医や担当の管理栄養士に相談しながら、一緒に整えていってくださいね。


免責事項・参考基準

本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。腎臓病の食事療法は、そのステージ・合併症・服薬内容・血液検査の数値によって個別に決まります。エネルギーを増やす具体的な量・食品の選び方は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。

参考にした基準・出典の系統

出典系統 内容 記事内の使用箇所
日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」 CKDステージ別のエネルギー・たんぱく質・カリウムの基準、十分なエネルギー確保とサルコペニア・PEW・フレイルへの注意 「たんぱく質を減らすと〜」節・「1日に必要なエネルギーの目安」節・「カリウム・リンを増やさずに足すための注意」節
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」 CKDの栄養療法における、たんぱく質制限とエネルギー確保の位置づけ(一般知識として参照) 「たんぱく質を減らすと〜」節
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」 エネルギー・栄養素バランスの一般的な考え方 「1日に必要なエネルギーの目安」節

※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。


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