健康診断で血糖値を指摘されたあと、「野菜をたくさん食べてね」と言われた経験はありませんか。
言われた本人からすると、どれくらい食べればいいのか、何が効くのか、けっこう曖昧なまま帰されることが多いんです。
そのカギになるのが食物繊維です。この記事では、食物繊維が血糖値とどう関わるのか、そして毎日の食事で無理なく増やす方法を、管理栄養士の目線でお話しします。
食物繊維は「血糖値のブレーキ役」

食物繊維には、糖の吸収をゆっくりにする働きがあります。
ご飯やパンの糖質は、そのまま食べると一気に吸収されて血糖値が急に上がります。ここに食物繊維が加わると、糖の通り道に渋滞が起きるようなイメージで、吸収のスピードがゆるみます。結果として、食後の血糖値の上がり方がなだらかになります。
「食べれば血糖値が下がる」「糖尿病が治る」というものではありません。あくまで上がり方をゆるやかにする、いわばブレーキ役です。それでも食事の工夫として、医療の現場でも大事にされています。
水に溶けるタイプと、溶けないタイプ
食物繊維は大きく2種類に分かれます。
ひとつは水溶性食物繊維。水に溶けてとろみのある状態になり、糖や脂質の吸収をゆるめます。海藻、大麦、オートミール、オクラ、なめこなどに多く含まれます。
もうひとつは不溶性食物繊維。水に溶けず、お腹の中でふくらんで腸の動きを助けます。野菜全般、豆、きのこ、玄米などが代表です。
どちらか一方ではなく、両方をとるのが理想。日本人は不溶性に偏りがちなので、海藻や大麦で水溶性を意識的に足すのがコツです。
1日の目標は20gくらい。でも足りていない人が多い

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日の食物繊維の目標量を、成人男性で21g以上、成人女性で18g以上としています(18〜64歳)。
ところが現実の摂取量は、令和元年の国民健康・栄養調査で平均14〜15g程度。目標まで5gほど足りていません。

出典: 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに筆者作成
タイトルの「1日20g」は、男女どちらの目標とも重なる、ちょうどいい目印です。
ここで大事なのは、いきなり完璧を目指さないこと。足りない5gは、おかずを1品足すくらいの感覚で十分に埋められます。次から具体的に見ていきます。
無理なく増やす5つのコツ

1. 主食をちょっと変える
白米に押し麦を混ぜるだけで、食物繊維が増えます。
最初は「白米3:押し麦1」くらいの控えめな割合から。炊飯器でいつも通り炊けるので、手間はほぼ変わりません。麦には水溶性食物繊維も含まれるので、一石二鳥です。
2. おかずをもう1品
野菜や豆、海藻の小鉢を1つ足すと、食物繊維は2〜4gほど上乗せできます。
生サラダよりも、煮たり茹でたりしてかさを減らしたほうが、量をとりやすくなります。塩分が気になる方は、味つけは薄めにしておくと安心です。
3. 乾物と豆を常備しておく
切り干し大根、ひじき、高野豆腐、大豆の水煮。これらを棚にストックしておくと、あと1品ほしいときにすぐ作れます。
切り干し大根は乾燥の段階で栄養がぎゅっと詰まっているので、戻して煮るだけで食物繊維がしっかりとれます。
4. きのこと海藻を足す
きのこと海藻は、カロリーがほとんどないのに食物繊維が豊富です。
味噌汁、炒め物、酢の物。今ある料理にぱらっと足すだけでいいので、いちばん取り入れやすいかもしれません。
5. 間食を見直す
お菓子の代わりに果物を少し(1日80kcalくらいが目安)にすると、食物繊維を足せます。
ただし果物の食べすぎは血糖値に響くので、量はほどほどに。ナッツ類も食物繊維がとれますが、脂質が多いので、つまみすぎには気をつけてください。
食物繊維がとれる、作り置きのおかず2品

病院で糖尿病食の献立を作っていたころ、よく登場していた副菜を2つ紹介します。どちらも常備品で作れて、まとめ置きができます。
切り干し大根の煮物

※画像はイメージです
切り干し大根(乾燥)10g、にんじん15g、油揚げ8gを目安に、だし・しょうゆ・みりん・砂糖で薄めに味つけします。
この組み合わせの1食分で、エネルギーは96kcal、食物繊維は2.7g。乾物だからこそ、少ない量でも食物繊維がしっかりとれる副菜です。
薄味のコツは、だしを濃いめに引くこと。煮汁を飲み干さないようにすれば、塩分も抑えられます。冷蔵で3〜4日もつので、週のはじめに作っておくと楽です。
かぼちゃのそぼろあん

※画像はイメージです
かぼちゃ100g、鶏ひき肉20gを目安に、しょうゆ・みりんで薄めに味つけし、水溶き片栗粉でとろみをつけます。
1食分でエネルギー136kcal、食物繊維3.5g。かぼちゃは不溶性食物繊維が多く、βカロテンやビタミンCも一緒にとれます。砂糖を控えてかぼちゃ本来の甘みを生かすと、血糖の面でも安心です。
かぼちゃは野菜の中では糖質が多めなので、1食80〜100gくらいを目安に。栄養士から量の指示がある方は、そちらを優先してください。
そのほか、大豆煮、高野豆腐の旨煮、小松菜の和え物、オクラの和え物、冬瓜の煮物なども、食物繊維を補う副菜として使いやすい顔ぶれです。
増やすときに気をつけたいこと

食物繊維は、急に増やすとお腹が張ったり、ゆるくなったりすることがあります。今の量から少しずつ、1〜2週間かけて慣らしていきましょう。
水分も一緒にとってください。とくに不溶性食物繊維は、水分があってこそ腸の中をスムーズに動けます。
ひとつ大切な注意点があります。野菜や豆、いも類にはカリウムも多く、腎臓の働きが落ちている方が摂りすぎると体に負担になることがあります。糖尿病で腎臓に影響が出ている方や、医師からカリウム制限を言われている方は、選ぶ食材が変わります。自己判断で大きく食事を変えず、必ず主治医や担当の管理栄養士に相談してください。
食物繊維は多ければいいという単純な話ではなく、その人の体の状態に合わせることが何より大事です。
おわりに

食物繊維は、血糖値の急な上がりをやわらげてくれる頼もしい味方です。
目標は1日20gくらい。でも平均は14〜15gなので、多くの人はあと少し足りていません。その差は、麦ご飯にする、小鉢を1つ足す、きのこや海藻を散らす、といった小さな工夫で埋まります。
今日の食卓に、おかずをもう1品。そこから始めてみてください。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。糖尿病の食事療法は、その方の病態・合併症・治療方針によって変わります。食事の変更や栄養量の調整は、担当の主治医および管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2020年版)(厚生労働省) | 食物繊維目標量(男性21g/日以上・女性18g/日以上、18〜64歳) | 「1日の目標は20gくらい」節 |
| 令和元年 国民健康・栄養調査(厚生労働省) | 成人の食物繊維平均摂取量(14〜15g程度) | 同節 |
※食物繊維の目標量は改訂で変わることがあります。最新情報は厚生労働省「日本人の食事摂取基準」の公式ページをご確認ください。

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