「糖尿病だから、おやつは我慢しないといけない」。診断されたとき、そう思う方は多いと思います。
ただ、間食を完全にゼロにする必要は必ずしもありません。日本糖尿病学会の診療ガイドライン2024でも、間食のとり方は一律禁止ではなく「量とタイミング、内容の選び方」で工夫する方向で解説されています。むしろ、無理な我慢が反動のドカ食いにつながることもあり、「上手に選んで、上手に食べる」ほうが続けやすいというのが、日々の指導で感じるところです。
この記事では、血糖値を上げにくい間食10種と、食べるタイミング・組み合わせのコツをまとめます。
◆ この記事でわかること
- 糖尿病の間食で押さえておきたい「量」と「タイミング」の基本
- 血糖値を上げにくいおやつを選ぶ3つの視点
- 実際に選びやすい間食10種と目安量・概算栄養
- 食べ方のコツと避けたいNGパターン
まず前提|間食は「量」と「タイミング」が9割

糖尿病の食事療法で、間食が問題になりやすいのは主に2つの理由です。
◆ 間食が血糖に影響しやすい理由
- 1日の総エネルギー・総糖質量が増える。3食にプラスして食べる分、体重管理や食後血糖の目標値を超えやすくなります。
- 食事と食事の間に血糖のピークを追加してしまう。食後血糖が下がりきる前に糖質が入ると、日中の血糖変動が大きくなります。
一般論としては、間食は1日200kcal以内、糖質量にして20g前後を目安にする指導が多いです(体格・治療方針で個人差あり)。ただしこれはあくまで参考値で、主治医や担当の管理栄養士から「間食禁止」「1日1回まで」「〇kcalまで」といった個別指示がある場合は、そちらを優先してください。
タイミングは、食後2〜3時間ほど経ってから、または次の食事まで時間があきすぎる前が目安です。食後すぐは血糖が上がっている最中なので追加の糖質を避け、逆に空腹すぎる状態で高糖質のおやつを一気に食べると血糖が乱高下しやすくなります。
血糖値を上げにくいおやつを選ぶ3つの視点

コンビニやスーパーで手に取ったパッケージの、どこを見ればよいのか。次の3つの視点で判断すると迷いにくくなります。
視点1: 糖質量を「g」で見る
「糖類ゼロ」「糖質オフ」の表示に惑わされず、栄養成分表示の炭水化物(または糖質)の欄をg単位で確認します。1回の間食で目安は糖質10〜20g以内が扱いやすい範囲。20gは、たとえば食パン6枚切1枚の約7割に相当します。
視点2: たんぱく質・脂質・食物繊維と組み合わさっているか
同じ糖質量でも、たんぱく質・脂質・食物繊維が一緒に含まれていると、血糖の上がり方が穏やかになりやすいことが知られています。ヨーグルトにベリーを添える、クラッカーにチーズを乗せる、といった「単品ではなく組み合わせ」の考え方が役立ちます。
視点3: 液体より固形を選ぶ
同じ糖質量でも、液体(ジュース・加糖コーヒー)は固形より血糖が上がりやすい傾向があります。喉が渇いたときは、水・お茶・無糖の炭酸水を基本にすると、間食の糖質枠を「食べる楽しみ」に使えます。
★ セカンドミール効果も間食に応用できる
朝食でたんぱく質・食物繊維をしっかり摂ると、昼食後の血糖上昇が穏やかになりやすい「セカンドミール効果」が知られています。おやつでも同じ原理が働きます。午後の間食でナッツやヨーグルトなどを選ぶと、続く夕食後の血糖の上がり方が緩やかになりやすいとされています。
選びやすい間食10種|目安量と概算栄養

日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとにした、代表値の目安です。商品・銘柄で値は変わるため、パッケージの成分表示もあわせて確認してください。
◆ 血糖値を上げにくい間食10種一覧
| おやつ | 目安量 | エネルギー | たんぱく質 | 糖質 | 食塩 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1. 素焼きミックスナッツ(無塩) | 25g(片手一握り) | 約155kcal | 5.5g | 4.5g | 0g |
| 2. 高カカオチョコ(カカオ70%以上) | 15g(約3片) | 約85kcal | 1.8g | 4.8g | 0.01g |
| 3. プレーンヨーグルト+ブルーベリー | ヨーグルト100g+ブルーベリー30g | 約73kcal | 4.0g | 7.6g | 0.1g |
| 4. プロセスチーズ | 1個(18g) | 約61kcal | 4.1g | 0.2g | 0.5g |
| 5. ゆで卵 | 1個(50g) | 約76kcal | 6.2g | 0.2g | 0.2g |
| 6. 枝豆(冷凍・塩ゆで) | 可食部50g | 約68kcal | 5.8g | 2.0g | 0.3g |
| 7. 小魚アーモンド | 1袋(10g) | 約55kcal | 3.6g | 2.0g | 0.15g |
| 8. 寒天ゼリー(無糖) | 1個(100g) | 約6kcal | 0g | 0.5g | 0g |
| 9. カットりんご | 1/4個(80g) | 約43kcal | 0.2g | 11g | 0g |
| 10. 全粒粉クラッカー+チーズ | クラッカー3枚+プロセスチーズ1個 | 約120kcal | 5.6g | 10.2g | 0.65g |
値は成分表2020年版(八訂)をもとにした代表値。商品差・銘柄差があります。

素焼きミックスナッツ(無塩)|25gは小鉢に軽く一杯、片手一握りが目安です ※画像はイメージです
1〜2種を組み合わせても、糖質量の合計が20g前後に収まる範囲で選びやすい構成です。ナッツやチーズ、ゆで卵、枝豆は糖質量が特に少なく、「あと1品足したい」ときの相棒として役立ちます。
高血圧を合併している方は、6・7・10の食塩量に注意し、無塩タイプを優先してください。
食べ方の3つのコツ

同じおやつでも、食べ方で血糖への影響は変わってきます。日々の指導で伝えている3つのコツを紹介します。
コツ1: 単品ではなく「組み合わせ」で
糖質だけの単品より、たんぱく質・脂質・食物繊維を含むものと一緒に摂るのが基本です。たとえば「りんごだけ」ではなく「りんご+ヨーグルト」、「クラッカーだけ」ではなく「クラッカー+チーズ」。手間はほとんど変わらず、食後血糖の上がり方が穏やかになりやすくなります。
コツ2: タイミングは「食後2〜3時間」または「次の食事の1時間以上前」
食後すぐは血糖が上がっている最中で、追加の糖質が乗ると次の食事まで下がりきらないことがあります。一方、次の食事の直前も避けたいところ。午後3時前後の間食が体内リズム上も血糖に影響しにくいとされており、「10時のおやつ」「3時のおやつ」に近い時間帯が扱いやすい目安です。
コツ3: 「ながら食べ」を避ける
テレビやスマホを見ながらの間食は、量の感覚が鈍りやすい行動パターンです。1回分をお皿に取り分けて、袋のまま食べない習慣にするだけで、実際の摂取量が減ることが指導現場でもよく確認できます。
避けたいNGパターン3つ
◆ 気をつけたい間食のパターン
- 液体で糖質を取る: 加糖コーヒー・野菜ジュース・スポーツドリンクは、飲みやすい分だけ糖質摂取のペースが速く、血糖が上がりやすい傾向があります。基本は無糖の飲み物で、飲み物と間食の糖質を混同しないのが原則です。
- 「シュガーレス」「ゼロカロリー」表示に頼りすぎる: 「糖類ゼロ」でも糖質(でんぷんなど)が含まれていることがあります。パッケージ裏の炭水化物・糖質欄をg単位で確認する習慣が確実です。
- 夜食(夕食後〜就寝前)の間食: 就寝前は活動量が少なく、血糖が下がりにくい時間帯です。夜にどうしても口さみしいときは、糖質を極力抑えたもの(無糖ヨーグルト少量・チーズ1個・ゆで卵1個など)を目安にとどめると、翌朝の空腹時血糖への影響が少なくなります。
おわりに
糖尿病の食事療法で、間食は「敵」ではなく、「量・タイミング・組み合わせ」で味方にできる要素です。
10種の候補から、生活のリズムや好みに合うものを2〜3種、いつも家に置いておく。それだけで、「今日はどうしよう」の判断が楽になります。まずは1週間、この記事の視点で選んでみて、血糖自己測定値や体調の変化を主治医と共有すると、その方に合った間食パターンが見えてきます。
インスリン治療中の方や、血糖降下薬を使っている方は、間食のタイミング・量が薬の作用と重なると低血糖のリスクが変わることがあります。具体的な間食の量や回数は、必ず主治医や担当の管理栄養士に確認してから調整してください。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。糖尿病の食事療法は、その方の病態・合併症・治療方針・服薬内容によって変わります。特にインスリン治療中の方、血糖降下薬を服用中の方、低血糖リスクがある方は、自己判断で食事や間食を大きく変えないでください。食事の変更や栄養量の調整は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」 | 間食のとり方・食べ方の工夫・セカンドミール効果への言及 | 前提節・食べ方のコツ節 |
| 日本人の食事摂取基準(2025年版)厚生労働省 | エネルギー・栄養素の目標量の目安 | 前提節 |
| 日本食品標準成分表2020年版(八訂)文部科学省 | 各食品のエネルギー・栄養素量 | 間食10種一覧表 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は各公式ページをご確認ください。

