「先生に減塩してと言われたけど、具体的に何をどう変えればいいのかわからない」。
外来でそう打ち明けてくれる方は、決して少なくありません。「薄味にする」はわかった。でも毎日の食事のどこを変えれば、本当に6gを切れるのか。そこが一番知りたいところだと思います。この記事では、1日6g未満を達成するための実践的なテクニックを順番に解説します。
◆ この記事でわかること
- 高血圧で「6g未満」が目標とされる理由
- 1日6gを達成するために変えるべき5つのポイント
- 味噌汁・清汁を使った汁物の塩分コントロール
- 減塩を無理なく続けるための注意点
なぜ「1日6g未満」なのか

まず、この数字の根拠を整理しておきます。
日本高血圧学会は、高血圧の方の食塩摂取量の目標を1日6g未満と定めています。一般的な健康成人の目標(「日本人の食事摂取基準2025年版」では男性7.5g未満・女性6.5g未満)よりも、さらに厳しい設定です。
なぜ高血圧の方だけ目標が違うのか。食塩(ナトリウム)を摂りすぎると、体が水分を抱え込んで血液量が増え、血管にかかる圧力が上がります。これが血圧上昇のしくみ。高血圧の方はもともとこのしくみが働きやすい体質の方が多く、そのぶん食塩の影響を受けやすいと考えられています。
「たった6gって、どのくらい?」と思われるかもしれません。小さじ1杯の食塩が約5〜6gです。一日三食で使う調味料、漬物、加工食品を全部合わせて、それだけしか使えない。実際に計ってみると、多くの方が「こんなに少ないのか」と驚かれます。
★ 日本人の平均摂取量と6g未満の差
厚生労働省の調査では、日本人成人の食塩摂取量の平均は男性で10g前後、女性で8〜9g前後とされています。1日6g未満を達成するには、今の食生活からかなりの量を削る必要があります。ただし、一度に全部変えようとすると続かない。まず「どこに塩分が多いか」を把握するところから始めましょう。
テクニック1: まず「量る」習慣をつける

減塩の第一歩は、感覚ではなく数字で把握することです。
醤油や味噌は、「いつもの量」で使っていると少しずつ増えていきます。大さじ1杯の醤油には食塩が約2.6g含まれていて、これだけで1日の目標の4割を超えます。みりん風調味料や酒など、塩分がほとんどない調味料と違い、醤油・味噌・塩・ソース・めんつゆは特に量に注意が必要です。
料理に使う調味料を計量スプーンで量る習慣をつけると、自分が実際にどれだけ使っているかがわかってきます。「目分量で使っていたら、実は1.5倍使っていた」というのはよくある話です。
食品の栄養成分表示にも慣れておくと便利です。「食塩相当量」の欄を確認する。インスタントラーメン1袋、めんつゆ1人分、市販のドレッシング大さじ1。どれも食塩が多い食品の代表格です。「食べてはいけない」ではなく、「食べるならその日の他の食事で調整する」意識を持つことが長続きのコツです。
テクニック2: だしを効かせて「塩分の仕事量」を減らす

塩分を減らしても満足感を保てる、最も効果的な方法がだしの活用です。
昆布やかつおのうま味成分は、舌の味覚を刺激します。同じ塩分量でも、だしをしっかり効かせた料理は「薄い」と感じにくい。これは感覚的な話ではなく、うま味と塩味の相乗効果として知られている事実です。
煮物・汁物・和え物に共通して使えます。顆粒だしでも構いませんが、顆粒タイプは食塩を含むものが多いので、使用量に気をつけてください。昆布を水に浸けて取った水出しだしや、かつおと昆布を合わせた合わせだしを常備しておくと、毎日の調理が楽になります。
テクニック3: 汁物の「回数」と「濃さ」を見直す


なめこの味噌汁 ※画像はイメージです
◆ なめこの味噌汁(1人分)の栄養価
※1食あたりの目安です
減塩を始めたときに、最も見直し効果が大きいのが汁物です。
一般的な味噌汁1杯には、使うみそや具材によって差はありますが、食塩が1杯あたり2g前後含まれます。
1日6g未満の目標の中で、味噌汁1杯だけで2gを超えると、残り4gを三食のおかず・漬物・その他すべてで管理しなければなりません。「汁物だから大丈夫」ではなく、汁物こそ塩分の主な出どころのひとつです。
◆ 汁物の塩分を抑える3つの方法
| 方法 | ポイント | 目安効果 |
|---|---|---|
| 1日1杯に減らす | 1日2杯飲んでいたなら、まず1杯に | 約2g削減 |
| みそを計量する | 1杯あたりのみそを12〜15gに固定する | 「だいたい」より0.3〜0.5g削減 |
| 清汁に切り替える | 週2〜3回、清汁(すまし汁)にする | 1杯あたり食塩が大幅に減る |
清汁(すまし汁)は、みそを使わず、だし汁に薄口しょうゆをごく少量加えて仕上げる汁物です。実際の病院給食で使われる清汁の食塩相当量は、うすくちしょうゆを1g使用した場合で0.3g程度と、味噌汁の約7分の1になります。
大根・お麩・みつばなど、だしの風味を引き立てる具材を選ぶと、薄味でも満足感が出ます。「毎日清汁は飽きる」なら、週に2〜3回の置き換えから始めてみてください。
テクニック4: 調味料の「かけ方」を変える

減塩しょうゆや減塩みそに切り替えるのも有効な手段ですが、その前に試してほしいことがあります。それは、調味料の「かけ方」を変えることです。
炒め物や焼き物で、醤油を最初に入れるか最後に入れるかで、塩分の感じ方が変わります。最後に少量をさっとからめると、表面にしょうゆの風味と塩味が残り、少ない量でも満足感が出やすい。煮物でも、煮始めから全量入れるより、仕上げに少し加える方が塩味を感じやすくなります。
テーブルで追加しょうゆをかける習慣がある方は、まずその一手間をやめるだけで塩分が減ります。刺身・冷奴・焼き魚など、何でも醤油をつける習慣は、思いのほか塩分を積み上げています。
★ 「酸味」「香り」「辛み」で代替する
酢やレモン・ゆずの酸味は、塩味を引き立てる効果があります。食塩をほとんど使わなくても、酸味が加わると物足りなさを感じにくい。
しょうがやにんにく、こしょう・七味唐辛子などの香りや辛みも同様です。これらに塩分はほぼ含まれないので、積極的に活用できます。ただし七味などを「辛みで塩分の代わりに」と大量に使いすぎると、胃腸への刺激になることもあるので、ほどほどに。
わさびや梅の酸味・塩けも使えますが、梅干しは1個で食塩1〜2g程度含むので、つけ合わせに使うなら他の調味料を減らして調整が必要です。
テクニック5: 加工食品・外食のつきあい方

家での調理を工夫するだけでは追いつかない原因が、加工食品と外食です。
市販のインスタントラーメンは1食で食塩5〜7g、冷凍うどんのつゆも含めると3〜4g超、ハムやソーセージは100gあたり2g前後の食塩が入っています。食パン1枚にも0.5〜0.8g程度の食塩があり、気づかず積み上がっていきます。
加工食品を全部やめる必要はありません。「週に何回使うか」と「その日の残り塩分をどう調整するか」を意識するだけで、かなり変わります。ハムをそのまま食べるときは醤油をつけない、インスタント麺のスープを半分残す、こういった部分的な工夫の積み重ねが現実的です。
外食では、丼・ラーメン・定食の漬物や汁物が塩分を大きく押し上げます。汁物の汁は全部飲まない、漬物は1〜2切れにする、テーブルに置いてあるソースや醤油はなるべく使わない。これだけでも1食あたり1〜2gの差になります。
◆ よく使う加工食品の食塩の目安
| 食品 | 量の目安 | 食塩相当量の目安 |
|---|---|---|
| インスタントラーメン(スープ含む) | 1袋 | 5〜7g程度 |
| 焼き竹輪 | 1本(約30g) | 0.5〜0.7g程度 |
| ウインナーソーセージ | 2本(約50g) | 0.9〜1.2g程度 |
| 食パン(6枚切り) | 1枚 | 0.5〜0.8g程度 |
| 味噌汁(一般的な濃さ) | 1杯 | 2g前後 |
※ 商品によって差があります。購入前に栄養成分表示の「食塩相当量」を確認する習慣をつけましょう。
注意点: 急に減塩しすぎない
減塩は大切ですが、「とにかく薄くすれば良い」でもありません。
長年の濃い味に慣れた舌は、急に薄味にすると食欲が落ちることがあります。高齢の方では食事量が減り、栄養不足につながるケースもあります。毎食少しずつ薄くしていく段階的な減塩が基本です。
また、利尿薬を服用している方や、過去に低ナトリウム血症を指摘された方は、食塩制限の程度を主治医に必ず確認してください。「6g未満」はあくまで一般的な指標であり、薬との組み合わせや体調によっては個別の調整が必要です。
腎臓機能が低下している方は、カリウムの摂りすぎを避ける必要がある場合があります。「野菜を増やして塩分を排出させる」という考え方は正しい面もありますが、腎機能の状態によっては逆効果になることも。食事の変更は主治医や担当の管理栄養士と確認しながら進めてください。
おわりに
高血圧の方が目標とする1日6g未満は、工夫なしに達成できる数字ではありません。ただし、計量・だし活用・汁物の見直し・調味料のかけ方・加工食品の把握という5つを少しずつ変えていけば、無理なく近づけます。
特定の食品を「禁止」にする必要はありません。1日全体で6g以内に収まるよう配分を考える。今日の夕食の汁物をすまし汁に切り替えるところから、はじめてみてください。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。高血圧の食事療法は、その方の病態・合併症・治療方針・服薬内容によって変わります。食事の変更や減塩の実施前には、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2025年版)(厚生労働省) | 食塩相当量の目標量(成人男性7.5g/日未満・女性6.5g/日未満) | 「なぜ1日6g未満なのか」節 |
| 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」 | 高血圧患者の食塩摂取量 6g/日未満 | 同節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。


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