健康診断でLDLコレステロールの値が少し高めだと言われたとき、まず頭に浮かぶのは「油を減らす」という対策かもしれません。
でも、食物繊維を増やすことがLDL改善にも関係していると聞くと、どういうこと?と思いませんか。
実は食物繊維には、食べた脂質の吸収に直接介入する働きがあります。今回は、食物繊維がコレステロールの改善に役立つ理由と、日常の食事で意識したい食材の選び方をお伝えします。
食物繊維がLDLに働きかけるしくみ

コレステロールは肝臓でつくられ、胆汁酸という消化液の原料にもなっています。食事で脂質を摂ったとき、この胆汁酸が腸に分泌されて脂質の消化を助けます。
通常、胆汁酸は腸の末端(回腸)で吸収され、肝臓に戻って再利用されます。「腸肝循環」と呼ばれるこのサイクルが、LDLコレステロールとどう関係するか。
ここに食物繊維が加わると、話が変わります。水溶性食物繊維が胆汁酸を抱き込み、そのまま便として排出してしまうのです。胆汁酸が体外に出ると、肝臓はコレステロールを使って新しい胆汁酸を作ろうとします。結果として、血液中のLDLコレステロールが消費される方向に動きやすくなります。
「食物繊維でLDLが改善しやすくなる」と言われるのは、この胆汁酸の排出促進という経路が大きな理由のひとつです。
加えて、水溶性食物繊維は腸内細菌のエサになり、短鎖脂肪酸(酪酸・プロピオン酸など)を産生します。この短鎖脂肪酸が肝臓でのコレステロール合成を抑制する、という研究も報告されています。
ただし「食物繊維を摂れば必ずコレステロールが下がる」ということではありません。あくまでLDLコレステロールの改善に役立つ可能性がある食事の工夫のひとつであり、主治医の治療方針が優先されます。
★ 食物繊維のLDL改善メカニズム(まとめ)
- 水溶性食物繊維が腸内で胆汁酸を吸着し、便として排出を促す
- 胆汁酸が減ると、肝臓がLDLコレステロールを使って補充しようとする
- 腸内細菌が発酵して生じる短鎖脂肪酸が、コレステロール合成を抑制する可能性も
水溶性と不溶性、どっちが大事?

食物繊維は「水溶性」と「不溶性」の2種類に分けられます。LDLへの直接的な関与という点では水溶性が特に注目されますが、両方にそれぞれの役割があります。
水溶性食物繊維は、水に溶けてゲル状(とろみのある状態)になります。胆汁酸や糖・脂質を包み込んで吸収速度を落とす働きが、この性質から生まれます。
含まれる食材は海藻類(わかめ・もずく・こんぶ・ひじき)、大麦・オートミール、こんにゃく、オクラ、なめこ、りんご・みかんなどの果物。ねばねば・とろとろした食感のものに多い、と覚えると選びやすいです。
不溶性食物繊維は、水に溶けず腸の中でふくらんで便のかさを増やします。腸の動きを活発にして便通を整えるのが主な働きで、腸内環境の改善を通じてコレステロール代謝を間接的に支えます。
含まれる食材は野菜全般(ごぼう・にんじん・ブロッコリー)、きのこ類(しいたけ・えのき・まいたけ)、大豆・小豆などの豆類、玄米・全粒粉パンなど。
日本人の食事を見ると、不溶性に偏りがちで水溶性が不足する傾向があります。脂質異常症が気になるなら、きのこや野菜の不溶性はそのままに、海藻・大麦・オートミールで水溶性を意識して上積みするのが現実的な方針です。
◆ 水溶性・不溶性の主な食材
| 種類 | 主な食材 | LDLへの働き |
|---|---|---|
| 水溶性 | わかめ・ひじき・こんぶ・大麦・オートミール・オクラ・なめこ・りんご | 胆汁酸の排出促進・吸収速度を落とす |
| 不溶性 | ごぼう・にんじん・きのこ類・大豆・玄米・全粒粉 | 腸内環境の改善・便通サポート |
1日の目標量と、現実の摂取量

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食物繊維の目標量は成人男性21g以上・成人女性18g以上(1日)とされています。さらに生活習慣病の予防・改善を重視する観点からは、男女とも24g以上が理想とも示されています。
ところが、令和元年(2019年)の国民健康・栄養調査によると、日本人の成人の食物繊維平均摂取量は約14〜15g程度にとどまります。目標との差は軽く5〜7g以上。「野菜不足」と言われる背景には、この数字が横たわっています。
毎日5〜7g不足しているというのは、副菜を1〜2品増やすレベルの話。いきなり全食見直しではなく、主食の一部を麦ごはんや雑穀に変えたり、汁物に海藻を加えたりするだけで近づけます。
◆ 食物繊維の目標量(食事摂取基準2025年版)
| 区分 | 目標量(1日) | 理想値 |
|---|---|---|
| 成人男性(18〜64歳) | 21g以上 | 24g以上 |
| 成人女性(18〜64歳) | 18g以上 | 24g以上 |
出典: 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに筆者作成
海藻・きのこ・野菜の具体的な選び方

脂質異常症が気になるときに意識したい食材を、グループ別に整理します。
海藻類(水溶性が豊富)
わかめ・ひじき・もずく・こんぶは水溶性食物繊維(アルギン酸・フコイダン等)を多く含みます。乾物として常備しておくと、みそ汁への追加・酢の物・和え物と使い回しが効きます。
ひじきは鉄分・カルシウムも含み、副菜として小鉢にしておけば複数の栄養課題に同時に対応できます。味付けは薄めが基本で、脂質異常症のある方は塩分にも配慮が必要です(後述の実例参照)。
もずくは酢との相性がよく、冷奴に乗せたり酢の物にするだけで食物繊維をプラスできます。コンビニでも個包装で手に入るので、忙しい日の外食でも取り入れやすい食材です。
きのこ類(不溶性・低エネルギー)
しいたけ・えのき・まいたけ・なめこ・しめじは不溶性食物繊維が豊富で、エネルギーが低いのが特徴です。なめこはぬめりに水溶性食物繊維も含みます。
炒め物・汁物・煮物と料理を選ばず、週に数回登場させやすい食材群です。乾燥しいたけは戻し汁ごとだしに使えて、うまみと食物繊維を同時に活用できます。
根菜・葉物野菜(不溶性のかたまり)
ごぼう・にんじん・ブロッコリー・ほうれんそうなど、根菜と葉物を組み合わせると不溶性食物繊維をしっかり摂れます。
ごぼうは下茹でしてきんぴらや筑前煮に使うと繊維をたっぷり摂れますが、調理に少し手間がかかります。一方、ブロッコリーは電子レンジで蒸すだけで副菜になるため、忙しい日でも取り入れやすいです。
副菜の実例:切り干し大根とひじき

食物繊維をコンスタントに摂るには、副菜の「常備菜化」が現実的です。毎食ゼロから作るのは続かないので、週末にまとめて仕込んでおく方法が向いています。
脂質異常症の食事として裏付けがある食材として、切り干し大根とひじきは特に食物繊維が摂れる和食の定番小鉢です。
切り干し大根の煮物は、水戻しした切り干し大根の食物繊維が1食あたり2.7gほど。煮物として副菜1品で摂れる量としては優秀です。にんじん・油揚げを合わせると、食物繊維と鉄分・カルシウムが同時に摂れる一石二鳥の副菜になります。

切り干し大根の煮物 ※画像はイメージです
ひじきの煮物は、食物繊維が1食あたり4.7〜5.1g(使う食材・量によって変動)と、副菜のなかではかなり多い部類です。大豆を合わせると食物繊維をさらに上積みできます。

ひじき煮(大豆入り)※画像はイメージです
ただし、ひじきも切り干し大根の煮物も、しょうゆ・みりんで味付けをするため食塩相当量が1食1〜1.5g程度になります。脂質異常症と高血圧を合わせて気にしている方は、しょうゆを少し控えて薄味で仕上げることをお勧めします(薄くするとしょうゆの量を3〜4割減らしても風味は維持できます。だしをしっかり取るのがコツです)。
◆ 副菜1食あたりの食物繊維量(目安)
| 副菜名 | 食物繊維 | エネルギー | 食塩相当量 |
|---|---|---|---|
| 切り干し大根の煮物(手作り) | 2.7g | 96kcal | 1.4g |
| ひじきの煮物(手作り) | 4.7g | 26kcal | 0.6g |
| 常備菜・ひじき煮(大豆入り) | 5.1g | 77kcal | 1.5g |
※1食あたりの目安です
食物繊維を増やす3つの切り口
脂質異常症の食事で食物繊維を増やすとき、「副菜を追加する」以外にも取り入れやすい方法があります。
主食を変える: 白米の一部を押麦(大麦)に置き換えた麦ごはんにすると、白米に比べて水溶性食物繊維を大幅に増やせます。「3合に大さじ2〜3の押麦を混ぜて炊く」だけなので、料理が増えるわけではありません。オートミールをリゾット風にする方法も、近年広まっています。
汁物に海藻を足す: みそ汁にわかめを加えるだけで、1食あたり水溶性食物繊維が加算されます。乾燥わかめは計量せずひとつまみ入れるだけで十分で、コストもほとんどかかりません。
果物を1日1回食べる: りんご・みかん・キウイには水溶性食物繊維(ペクチン等)が含まれています。果物はたしかに糖質を含むので食べすぎには注意ですが、1日1回・小ぶり1個程度を毎日食べるのは脂質異常症の食事として理にかなっています。
★ 食物繊維を増やす3つの取り入れ方
- 主食の一部を麦ごはん・オートミールに変える(水溶性を追加)
- みそ汁にわかめを入れる習慣をつける(手軽・低コスト)
- 副菜に切り干し大根やひじきを週2〜3回レギュラー化する
気をつけたいこと
食物繊維はまとめて一気に増やすとお腹が張ったり、下痢・腹痛を起こすことがあります。現在の食事から急に5g以上増やすのではなく、主食を変えるところから始めて1〜2週間かけて慣らすのが無理のない進め方です。
また、食物繊維が豊富な食品のなかには、糖尿病や腎臓病の食事指導で注意が必要なものもあります(果物の糖質・豆類のカリウムなど)。複数の疾患を抱えている場合は、食事の変更前に主治医や担当の管理栄養士に確認してください。
おわりに
食物繊維がコレステロールに働きかけるしくみは、油を減らすのとはまた違う切り口です。水溶性食物繊維を意識して摂るだけで、日常の食事から少しずつLDL改善の積み上げができます。
完璧な食事を組まなくても、みそ汁にわかめを足す・主食を麦ごはんに変える・切り干し大根を週2〜3回常備するといった小さな行動が積み重なります。まず1つから試してみてください。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。脂質異常症の食事療法は、その方の病態・合併症・治療方針・服薬内容によって変わります。食事の変更前には、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2025年版)(厚生労働省) | 食物繊維目標量(成人男性21g/日以上・女性18g/日以上) | 「1日の目標量と現実の摂取量」節 |
| 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」 | 食物繊維・植物ステロールに関する推奨 | 「LDLに働きかけるしくみ」節 |
| 文部科学省「日本食品標準成分表」 | 食品の食物繊維含有量 | 「副菜の実例」節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。


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