「揚げ物は太る」という話はよく聞きますが、血糖値との関係はあまり語られません。
実は、血糖値が気になる人にとって揚げ物の何が問題なのかは、「カロリーが高い」だけでは説明しきれないんです。脂質の量と種類、食後血糖の上がり方、そして「どのくらいの頻度なら食べていいか」。この3点を整理すると、揚げ物との付き合い方がずいぶん変わってきます。
◆ この記事で整理すること
- 揚げ物と血糖値・脂質の関係(カロリーだけじゃない理由)
- 糖尿病の食事で脂質はどのくらいを目安にするか
- 揚げ物の頻度コントロールの考え方
- 揚げ物を減らしたいときの代替調理・選び方の実践
- 調理家電の活用(記事末に1段落)
血糖値と脂質の関係、ひとつ誤解されていること

「脂質を食べても血糖値は上がらない」という話を聞いたことはないでしょうか。
脂質はたんぱく質と同じく、炭水化物ほど急激な血糖上昇を引き起こしません。それは事実です。ただし、「だから揚げ物は血糖管理に影響しない」と考えるのは少し違う。
問題は、揚げ物が「脂質の過剰摂取」「カロリーオーバー」「炭水化物との組み合わせ」という3つの面から血糖管理に関わってくることです。
ひとつずつ見てみます。
脂質の過剰摂取とインスリン抵抗性
脂質、なかでも飽和脂肪酸の過剰摂取は、インスリンの効き目を鈍らせる「インスリン抵抗性」と関係があることが研究から示されています。揚げ物には飽和脂肪酸だけでなく大量の油が使われるため、食べ続けることで血糖管理がしにくい体質へと傾きやすいのです。
カロリーオーバーと体重
血糖値の管理には適正体重の維持が重要です。揚げ物はエネルギー密度が高く、定食のメインに揚げ物が入ると昼食だけで一日に必要なエネルギーの相当な部分を占めることがあります。体重が増えると、それ自体がインスリン抵抗性を悪化させます。
炭水化物との組み合わせ
揚げ物は単体で食べることはあまりなく、白米・パン・麺と一緒に食べることがほとんどです。衣にも炭水化物が含まれます。炭水化物をたっぷり含む食事に脂質が重なると、食後の血糖が上がりきるまでの時間が延びる傾向があり、食後2〜3時間にかけてじわじわと値が上がる「遅延性の血糖上昇」を生じやすくなります。
糖尿病の食事で脂質はどのくらいを目安にするか

日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人の脂質エネルギー比の目標量を20〜30%E(総エネルギーの20〜30%)としています。
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」でも、脂質エネルギー比は同様に20〜30%が推奨されています。つまり「揚げ物を一切禁止」とは書かれておらず、脂質の総量と質(飽和脂肪酸の摂りすぎを避ける)を管理することが食事療法の柱です。
では「20〜30%E」がどのくらいかというと、1日のエネルギー摂取量が1600kcalの方を例にとると、脂質は35〜53g程度が目安の範囲になります。揚げ物1品の脂質量がこの目安の中でどの程度の割合を占めるか、それを意識することが重要です。
実際、揚げ物は1品あたりの脂質量がかなり多くなります。コンビニや惣菜コーナーで売られている白身魚フライや鶏の唐揚げは、特に既製品だと衣の吸油量が多く、1食で昼食の脂質枠をほぼ使い切ってしまうことも珍しくありません。
「週に何回まで?」という問いへの現実的な答え

「揚げ物は週に何回まで食べていいですか」は、栄養相談でよく聞かれる質問のひとつです。
正直に言うと、明確な「週○回まで」という数字は、食事摂取基準にも糖尿病の診療ガイドラインにも書かれていません。その理由は、揚げ物の種類・量・付け合わせ・その日の他の食事の内容によって脂質の摂取量がまったく変わってしまうからです。
ただ、現場での感覚として目安を言えば、次の考え方が参考になります。
★ 揚げ物の頻度コントロール・3つの考え方
- 「週2〜3回以内」を当面の目標に: 毎日揚げ物が食卓に並ぶ状況は、1日の脂質量が上限を超えやすい。週の後半に揚げ物が続くなら、週前半で「焼く・蒸す・煮る」が多い日をつくる
- 1食の量で調整する: 揚げ物を食べる日は「量を半分」「付け合わせを蒸し野菜や汁物にする」など、1食全体の脂質量が偏らないようにする
- 他の食事で帳尻を合わせる: 昼に揚げ物を食べたなら、夕食のメインは煮魚や豆腐料理にする。1食単位でなく1日単位・1週間単位で脂質の量を見ると気持ちがラクになる
「揚げ物を食べてしまったら失敗」ではなく、「食べた翌日の食事でバランスをとる」というサイクルを意識するだけで、血糖管理への影響をかなり抑えられます。
揚げ物の代わりになる調理法と選び方

揚げ物を楽しみながら脂質を減らす方法は、いくつかあります。「ゼロにする」より「置き換える」が長続きします。

タラの西京焼き|揚げ物の代わりに、油を使わない焼き魚で主菜を組み立てるアイデアです ※画像はイメージです
焼く・グリルする
鶏むね肉や白身魚は、フライパンで皮目を焼くか、グリルでこんがりさせるだけでもかなりの満足感が出ます。脂質はフライの3〜4分の1程度。衣をつけてオーブンで焼く「オーブン焼き」にすると、カリカリ感もある程度再現できます。
蒸してソースで変化をつける
鶏むね肉・白身魚・豆腐は蒸し料理との相性がよく、ねぎポン酢・柚子こしょう・トマトソースなどのソースで変化をつけると単調になりません。脂質はほぼゼロに近い調理法です。
揚げ焼きにする(油を薄くひく)
フライパンに油を少量(小さじ1〜2程度)だけひき、転がしながら揚げ焼きにする方法。本来のフライより油の吸収量をかなり抑えられます。食感はやや劣りますが、「揚げ物の雰囲気」は残ります。
外食・惣菜なら「選び方」で工夫する
外食で揚げ物を外せないなら、次の点を意識してみてください。
◆ 外食・惣菜の揚げ物を選ぶときのポイント
| 視点 | 具体的な選び方 |
|---|---|
| 素材を選ぶ | 白身魚・えび・鶏むね肉などたんぱく質が多く脂身が少ない素材のフライを選ぶ。豚カツ(バラ・ロース)は脂質が多め |
| 衣の厚さ | 衣が厚いほど油を吸う。薄衣(竜田揚げ・素揚げ)を選ぶと吸油量が抑えられる |
| 量を調整する | 1品を食べきるより「半分にする」「付け合わせを副菜に換える」が効果的 |
| ソースをつけすぎない | ウスターソースは塩分、マヨネーズは脂質が多い。ポン酢・レモン汁で代替する |
脂質の「質」も忘れずに
揚げ物の頻度・量のコントロールができてきたら、次の視点として「どんな油が使われているか」も意識するとさらに管理しやすくなります。
揚げ油には一般的にサラダ油・キャノーラ油・コーン油などが使われますが、市販のフライドチキンやコンビニ揚げ物には飽和脂肪酸が多いパーム油(ヤシ油)が使われているものも少なくありません。自宅で揚げる場合は、キャノーラ油やオリーブ油を選ぶと飽和脂肪酸の摂取を抑えやすいです。
飽和脂肪酸については「脂質異常症と飽和脂肪酸|減らしたい油・選びたい油」の記事でより詳しく解説しています。血糖管理と脂質異常症の両方が気になる方はあわせてご覧ください。
また、血糖管理全体では炭水化物の量とのバランスも重要です。揚げ物を食べる日の主食の量をどのくらいにするかは「糖尿病の食事で炭水化物はどのくらい?1食の目安を管理栄養士が解説」をご参照ください。
ノンフライヤー・スチームオーブンについて(調理家電の参考情報)
最近は「ノンフライヤー」「熱風オーブン」「スチームオーブンレンジ」といった調理家電を使って、油なしまたは少量の油でフライに近い食感を出せる製品が普及しています。
これらは脂質の摂取量を減らしながら「揚げ物の食感・満足感」をある程度保てる点で、糖尿病や脂質管理が必要な方の調理に活用されています。ただし調理家電自体が血糖値や脂質を直接コントロールするわけではなく、あくまでも「油の使用量を減らす調理の選択肢を増やすもの」という位置づけです。
購入を検討する際は、実際に使っている方の口コミや、各製品の食品成分への影響(加熱温度・時間の設定など)を確認するとよいでしょう。
◆ 執筆者プロフィール
管理栄養士(国家資格)。総合病院の栄養管理部門に8年勤務し、入院患者約300名分の日次献立作成・栄養管理を担当。現在はパートの仕事と育児の合間に、生活習慣病の食事相談・献立作成に対応しています。
おわりに
揚げ物を「食べてはいけないもの」として完全に外すより、週の中でバランスをとりながら付き合っていくほうが、食事療法は長続きします。
脂質の量・質を意識しながら、代替調理や選び方の工夫を少しずつ取り入れてみてください。今日の夕食の主菜を焼き魚や蒸し料理にするだけでも、確実に一歩です。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。糖尿病の食事療法は、その方の病態・合併症・治療方針・服薬内容によって変わります。食事の変更や減量の実施前には、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2025年版)(厚生労働省) | 脂質エネルギー比目標量(成人20〜30%) | 「糖尿病の食事で脂質はどのくらいを目安にするか」節 |
| 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」 | 食事療法・脂質の推奨 | 同節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。


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