「気をつけているのに、続かないんです」
減塩の話でいちばん多いのが、これです。診察のあと数日はしっかり薄味にしていた。でも1週間もすると、なんとなく元の味に戻っている。本人にやる気がないわけではなく、たいてい、やり方の順番のところでつまずいています。
減塩が続かない理由は、だいたい5つに分けられます。全部に当てはまる人はいません。自分がどこで落ちているのかが分かれば、直すのは1か所で足ります。以下、順に見ていきます。
初日から全部の料理を薄味にしてしまう

原因。「減塩してください」と言われた翌日から、味噌汁もおかずも漬物も一斉に薄くする。これがいちばん多い挫折パターンです。舌はいきなりの変化に慣れません。3日ほどで食事が味気なくなり、その反動で戻ります。家族が先に音を上げることもあります。
対処。変える場所を週ごとに1つに絞ります。目安として、こんな順番でどうでしょうか。
| 週 | 変えるところ |
|---|---|
| 1週目 | 汁物の杯数を1日1杯までにする |
| 2週目 | 食卓のしょうゆ・ソースを小皿に取り分ける |
| 3週目 | 加工品(練り物・ハム・漬物)の回数を減らす |
| 4週目 | 麺類の汁を残す。外食の頻度を1回分ずらす |
1か月かけて4か所。ゆっくりに見えますが、この速度のほうが結果的に残ります。1週目がうまくいかなかったら、2週目も同じ課題でかまいません。
引き算だけをしていて、足す工夫がない

原因。減塩を「調味料を減らすこと」だとだけ理解していると、料理は薄いだけのものになります。塩を引いた分の埋め合わせが無いので、おいしくない食事を我慢する時間が続きます。我慢は続きません。
対処。塩以外で満足感をつくる材料を、意識して足します。だしのうまみ、酢やレモンの酸味、にんにく・しょうが・こしょうの香り、焼き目の香ばしさ、少量の油のコク。このうちどれか1つが入るだけで、薄味でも食べられる料理になります。
分かりやすいのがトマトを使った煮込みです。食塩無添加のトマト缶を使うと、酸味とうまみが濃く出るので、味つけの塩をほとんど使わずに仕上がります。

チキンのトマト煮|酸味とうまみで塩を減らした主菜 ※画像はイメージです
| 鶏もも肉(皮つき) | 80g |
| ホールトマト(食塩無添加) | 80g |
| たまねぎ | 30g |
| にんにく | 2g |
| サラダ油 | 5g(小さじ1強) |
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鶏もも肉は一口大に切る。たまねぎは薄切り、にんにくはみじん切りにする。
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鍋に油とにんにくを入れて弱火にかけ、香りが立ったら鶏肉を皮目から焼きつける。表面に焼き色をつけると、香ばしさが塩の代わりになる。
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たまねぎを加えて透きとおるまで炒め、ホールトマトを潰しながら加える。
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ふたを少しずらして10分ほど煮る。味をみて足りなければ、こしょうか少量の塩で仕上げる。
◆ 栄養価(1人分の目安・仕上げの塩を加えない場合)
トマト缶を選ぶときは、食塩無添加の表示があるものを選んでください。味つきのトマトソース缶やケチャップは、それ自体に食塩が入っています。
汁物の「杯数」を数えていない

原因。おかずの味つけばかり気にして、汁物が計算から抜けている場合です。味噌汁は1杯で食塩2.1g前後になります。高血圧の方の目標は1日6g未満(日本高血圧学会)ですから、朝と夕に1杯ずつ飲むと、それだけで1日の7割近くを汁物が占めることになります。
対処。減らし方は3通りあります。杯数を減らす、椀を小さくする、汁の種類を替える。豆腐と三つ葉のすまし汁のようにだしを主役にしたものなら1杯0.6gほどで、味噌汁1杯を置き換えるだけで1.5g前後減ります。
具だくさんにして汁の量そのものを減らす方法もあります。味噌の量を変えずに具を増やせば、飲む汁が減るぶん摂る食塩も減ります。
見えない塩が計算に入っていない

原因。調味料だけを見ていて、食品そのものに含まれる食塩を数えていないパターンです。パン、ゆで麺、ハム、ちくわ、かまぼこ、チーズ、漬物、市販の惣菜。これらは味つけをしなくても、はじめから食塩が入っています。「今日は薄味にしたのに減っていない」という日は、たいていここです。
対処。全部を覚える必要はありません。栄養成分表示の「食塩相当量」を、買う前に1回だけ見る。同じ棚の商品を2つ比べて少ないほうを取る。それだけで足ります。
★ まず見る価値があるのはこの4つ
パン・麺類(主食は毎日食べるので効きます)、練り物・ハム類、市販の惣菜と弁当、そして調味料そのもの。
しょうゆは小さじ1で食塩約0.9g。減塩しょうゆに替えるとおよそ半分になります。ただし減塩タイプには塩化カリウムを使った商品があり、腎機能について注意を受けている方は主治医への確認が必要です。
1日単位で採点して、外食1回で崩れたと感じる

原因。毎日きっちり6g未満を守ろうとすると、法事やラーメンの日に「もうだめだ」となります。減塩をやめてしまう引き金は、味覚よりこの挫折感のほうが多い印象です。
対処。採点の単位を1週間に広げます。外食した日は超えて当然。その前後の日で汁物を1杯減らす、麺の汁を残す。1週間の合計でならすと考えれば、1回の外食は取り返せる範囲におさまります。
血圧そのものも1日で決まる数字ではありません。家庭で測っている方は、1日の値に一喜一憂せず、1週間の平均で眺めてください。上下しながら、ゆるやかに下がっていれば十分です。
おわりに
5つのうち、読みながら「これだ」と思った項目はいくつあったでしょうか。1つで十分です。今週はその1つだけを変えて、残り4つは来月以降に回してください。
減塩は、一度きりの決意で片づく作業ではなく、味の好みをゆっくり作り替えていく期間のあるものです。うまくいかない週があっても、そこで終わりにはなりません。少しずつ、無理のない範囲でやっていきましょう。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。高血圧の食事療法は、その方の血圧の状態・合併症・腎機能・服薬内容によって目標量が変わります。減塩調味料に含まれるカリウムの扱いも腎機能によって指示が異なります。食事の変更や栄養量の調整は、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本高血圧学会 減塩・栄養委員会 | 高血圧の食塩制限は1日6g未満を推奨 | 「汁物の杯数」節 |
| 日本人の食事摂取基準(2025年版)(厚生労働省) | 成人の食塩相当量の目標量(男性7.5g未満・女性6.5g未満/日) | 1日量の考え方の背景 |
| 日本食品標準成分表(文部科学省) | しょうゆ・減塩しょうゆの食塩相当量 | 「見えない塩」節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

