「ちゃんと食べているのに、なんだか筋力が落ちてきた気がする」。
そんなことを感じながら、親の食事を準備している方は多いと思います。食べているはずなのに体力が維持できない。その原因のひとつとして見落とされがちなのが、たんぱく質の不足です。
ご飯やパンを中心にして「量は食べているから大丈夫」と思っていても、たんぱく質が少なければ筋肉を維持する材料が足りません。高齢になるほど、意識的に摂る必要があります。
◆ この記事でわかること
- 高齢者にたんぱく質が特に必要な理由(フレイル・サルコペニアとのつながり)
- 1日に必要なたんぱく質の量の目安
- 食が細い方でも摂りやすい「少量で高たんぱく」な食材と料理
- やわらかく飲み込みやすく仕上げるコツ
- 腎機能が気になる場合の注意点
「食べているのに筋肉が落ちる」のはなぜか

年を重ねると、同じ量のたんぱく質を摂っても筋肉に変えにくくなります。これは「同化抵抗性」と呼ばれる加齢による変化で、若い頃と同じ食べ方では筋肉の合成が追いつかなくなっていくことを意味します。
つまり、高齢者はたんぱく質の利用効率が下がっている分、若い頃よりも多く、意識的に摂る必要があります。
この状態が続くと「フレイル(虚弱)」や「サルコペニア(筋肉量の低下)」につながります。ふらつき・転倒・骨折のリスクが上がり、そのまま寝たきりになってしまうケースも少なくありません。
怖いのは、急激に悪化するわけではないことです。少しずつ、気づかないうちに体力が落ちていく。だから、日常の食事でこつこつ手当てしていくことが大切になります。
1日に必要なたんぱく質の量の目安
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、フレイル予防の観点から、高齢者のたんぱく質は体重1kgあたり1.0〜1.2gを目安とすることが示されています。
体重50kgの方であれば、1日50〜60g程度が目安です。
「なんだ、それくらいなら食べているよ」と思うかもしれません。でも、食が細くなった高齢者が1食あたりで摂れるたんぱく質は意外と少ないのです。ご飯・味噌汁・漬け物だけで済ませてしまうと、それだけで1食あたりのたんぱく質は5g前後になってしまうことがあります。
3食かけても合計15〜20g台では、目標の半分以下です。
★ 1食でたんぱく質10gを目指すと計算しやすい
1日50〜60gを3食で割ると、1食あたり約17〜20g。おかずが1品だと難しくても、主菜+副菜の組み合わせで10〜15gを目指し、乳製品や間食で補う。この考え方が実践しやすいです。
少量で高たんぱく。高齢者に向く食材はこれ
食が細くなっても、食材の選び方次第で効率よくたんぱく質を摂れます。特にやわらかくて飲み込みやすい食材を中心に選ぶのがポイントです。
豆腐(木綿)
木綿豆腐1/2丁(約150g)にはたんぱく質が約10.5g含まれています。形を崩して加熱すれば飲み込みやすく、価格も手ごろです。
炒り豆腐や豆腐のあんかけは、柔らかくてまとまりが出るため、噛む力が落ちてきた方にも食べやすい。それでいてたんぱく質をしっかり摂れる優れた料理です。
豆腐のあんかけは1皿でたんぱく質7.0g、エネルギー89.4kcal。カロリーを抑えながら必要な栄養を補えます。
◆ 栄養価(豆腐のあんかけ 1皿分の目安)
※1食あたりの目安です
卵(茶碗蒸し)
卵は完全たんぱく質と呼ばれ、体に必要なアミノ酸がバランスよく含まれています。茶碗蒸しにすると、加熱でふるふるとやわらかくなり、そのまま飲み込める食感になります。

茶碗蒸し|なめらかで飲み込みやすく、卵のたんぱく質が摂れる ※画像はイメージです
茶碗蒸し1個でたんぱく質10.9g、エネルギー97.9kcal。飲み込みが心配な場合は具を省いたシンプルな卵液だけで作っても十分です。
◆ 茶碗蒸し(1人分)の栄養価
※1食あたりの目安です
豆腐ハンバーグ(やわらか仕立て)
ひき肉と豆腐を混ぜて蒸し焼きにした豆腐ハンバーグは、通常のハンバーグより柔らかく仕上げやすい料理です。たんぱく質9.8g、エネルギー136.8kcalで食べごたえもあります。
ひき肉だけよりも水分が多く保たれるため、口の中でまとまりやすいのが特徴。あんをかければさらに飲み込みやすくなります。
◆ 栄養価(豆腐ハンバーグやわらか 1個分の目安)
※1食あたりの目安です
ヨーグルト・牛乳
乳製品はたんぱく質に加えてカルシウムも摂れる便利な食材です。加熱不要で口当たりも滑らか。食欲がない日でも取り入れやすい。
プレーンヨーグルト100gにはたんぱく質が約3.6g含まれています(日本食品標準成分表参照)。おやつがわりに1日1回習慣にするだけで、1日のたんぱく質量を底上げできます。
「やわらかく」「飲み込みやすく」仕上げる3つの工夫

いくら栄養価の高い食材を選んでも、硬くて食べにくければ口に運んでもらえません。特に高齢の方は「飲み込む力(嚥下機能)」も低下しやすいため、食感と口当たりへの配慮が必要です。
1. 加熱時間を長めに取る
煮物や蒸し物は、通常より少し長く加熱するだけでやわらかさが大きく変わります。豆腐は崩れることを恐れず、しっかり火を通してください。
2. あんでまとめる
バラけやすい食材にはくず粉やでん粉でとろみをつけたあんをかけると、食材がひとかたまりになり飲み込みやすくなります。豆腐のあんかけ・卵豆腐にあんをかける・煮魚にとろみ汁をかける、といった応用ができます。
3. ひき肉や豆腐でかさ増しする
塊肉は噛み切りにくいため、ひき肉で代用するのが基本です。豆腐と混ぜると水分が増えてさらに柔らかく仕上がります。
★ 嚥下状態に合わせた形態の判断は専門家へ
「ペースト食がよいか」「とろみはどのくらい必要か」といった判断は、本人の嚥下機能によって大きく異なります。食事中にむせることが多い場合は、主治医・言語聴覚士・担当の管理栄養士に相談してください。この記事の内容はあくまで一般的な情報です。
腎機能が低下している場合は必ず主治医に確認する
高齢者の中には、加齢とともに腎機能が低下している方もいます。腎臓の状態によっては、たんぱく質を制限しなければならないケースがあります。
フレイル予防のために「たんぱく質をもっと摂ろう」と意識するのは正しい方向性ですが、腎機能が低下している場合には逆効果になることがあります。たんぱく質の代謝産物が腎臓に負担をかけるためです。
「たんぱく質を増やした方がいいのか、控えた方がいいのか」は、血液検査の数値(クレアチニン・eGFRなど)を確認しながら主治医が判断します。自己判断で増やすことは避けて、まずは主治医や担当の管理栄養士に相談することが大前提です。
1週間の取り入れ方のイメージ
「毎日考えるのが大変」という方には、曜日ごとに主食材をローテーションする方法がおすすめです。
月・水・金は豆腐中心の副菜(炒り豆腐・豆腐のあんかけなど)、火・木は卵料理(茶碗蒸し・だし巻き卵)、週に一度はひき肉を使った豆腐ハンバーグ。毎日のヨーグルトを習慣にする。
こうするだけで、食材が単調にならずたんぱく質源のバリエーションが保てます。
やわらかく仕上げやすい食材と料理の具体的な工夫については、高齢の親のやわらか食を安く|家計にやさしい介護食の工夫でも詳しく紹介しています。あわせて参考にしてください。
おわりに
高齢者の低栄養・フレイル予防には、たんぱく質を意識的に、毎食少量ずつ摂り続けることが大切です。
豆腐・卵・ひき肉・乳製品は、柔らかく調理しやすくコストも抑えやすい食材ばかりです。あんでまとめるひと手間を加えるだけで、飲み込みやすさもぐっと上がります。腎機能の低下が疑われる場合は、たんぱく質を増やす前に必ず主治医に確認してください。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。高齢者の栄養管理は、嚥下機能・腎機能・服薬等の個別の状態によって最適な内容が変わります。食事の変更前には、必ず主治医・担当管理栄養士・言語聴覚士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2025年版)(厚生労働省) | 高齢者のたんぱく質目標量(1.0〜1.2g/kg体重/日) | 「1日に必要なたんぱく質の量の目安」節 |
| 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食学会分類2021」 | 嚥下調整食の形態分類 | 「やわらかく・飲み込みやすく仕上げる3つの工夫」節 |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。


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