本記事は一般的な情報提供であり、個別の治療方針は主治医・担当管理栄養士の指示を優先してください。
熱っぽい朝、いつもの食事表はいったん脇に置きます
朝起きたら熱っぽい。喉が痛くて、ごはんを見ても箸が進まない。糖尿病の食事療法を続けている方ほど、こういう朝に「食べなきゃ」「でも量ってどうしよう」と余計に迷ってしまうことがあります。
体調が崩れている日は、いつもの食事の型をいったん外していい日です。これを「シックデイ」と呼び、進め方には一応の目安があります。今日1日の流れを朝から夜まで追いながら、場面ごとに「ここだけ変える」を確認していきます。
朝|食べられなくても、まず水分と安静から

熱がある朝は、無理に主食・主菜・副菜を揃えなくて大丈夫です。優先順位は安静と水分補給が先、食事は後。まずは体を休め、常温の水やお茶を少しずつ口にすることから始めます。
ここで一つだけ変えるとしたら、「食べられる量だけ食べる」への切り替えです。いつもの茶碗一杯が無理なら、数口でも構いません。飲んでいる薬がある方は、体調が悪いからといって自己判断で中止せず、いつも通り続けるか、量を調整すべきか、早めに主治医へ確認してください。ここは自分で判断しない場所です。
昼|食欲が戻らないときの「ここだけ変える」

昼になっても食欲が戻らない日は、消化にやさしいものへ切り替える1点だけを意識します。おかゆ、やわらかく煮たうどん、すりおろしたりんごなど、噛む力をあまり使わずに炭水化物を補える食品が候補になります。
無理に品数を増やす必要はありません。炭水化物をゼロにしないことだけ覚えておけば十分です。まったく食べられない状態が長く続くと、体は蓄えを使ってエネルギーを補おうとし、かえって血糖値が上がりやすくなることがあります。食べられないなりに、少しでも口にしておく。そのくらいの構えでいてください。
間食と水分|「一気に」より「こまめに」

午後は食欲より先に、水分が足りているかを気にかけたい時間です。発熱・下痢・嘔吐があると、体から水分が思った以上に失われます。コップ1杯を一度に飲み干すより、少量を何度にも分けて口にするほうが、吐き気があるときも続けやすいです。
スープやみそ汁のように、水分と一緒に塩分・エネルギーも補えるものは、この時間帯にちょうどいい選択肢になります。甘い飲みものは避けたくなるかもしれませんが、食事がほとんど摂れていない日は、エネルギー切れを防ぐ目的で少量のジュースやスポーツドリンクをすすめられることもあります。この判断も、普段の血糖コントロールの状態によって変わるので、迷ったら電話でも相談していい場面です。
夕方から夜|食べられた分だけでいい

夕方になって少し食欲が戻ってきたら、無理のない範囲で普段の食事に近づけていきます。逆に朝より悪化しているなら、無理をせず、昼と同じくらいの消化にやさしい食事を続けます。
★ 夜までに確認しておきたいこと
薬を飲んでいる方は、その日の分をきちんと飲めたか、飲めなかった分をどうするかを振り返る。判断は主治医の指示に沿って。
血糖を測っている方は、いつもよりこまめに測って記録しておく。次の受診や電話相談のときの手がかりになります。
今日1日で「まったく食べられなかった」時間がどれくらいあったかを、ざっくりでいいので覚えておく。
1日を振り返って|量より「切らさない」を優先する
朝から夜までを通して見ると、シックデイの食事は品数や分量を揃えることより、水分と少しの炭水化物を途切れさせないことが軸になります。いつもの1食分に届かなくても、1日を通して口にできたものがあれば、それで十分な日もあります。
薬を使っている方が最も気をつけたいのは、体調が悪いからと自己判断で服薬を止めたり量を変えたりしないことです。食べられていないから薬もやめる、という判断は危険なことがあります。迷ったときは、我慢せず主治医・かかりつけ医に連絡してください。
こんなときは早めに連絡・受診を

体調不良の中でも、次のような状態は一人で様子を見ず、早めに医療機関へ連絡する目安とされています。
◆ 早めの連絡を考えたいサイン
| 嘔吐・下痢が続く | 水分すら受けつけない状態が続くとき |
| 高熱が続く | 38度以上の熱がおさまらないとき |
| ほとんど食べられない日が続く | 丸1日近く、食事がほぼ摂れていないとき |
| 意識がぼんやりする | いつもと様子が違う、反応が鈍いと感じるとき |
これらは「必ずこの数値になったら」という自己判断の基準ではなく、連絡を迷ったときの目安として知っておくと安心できるものです。血糖値の変化が気になる場合も、数値だけで自分で対応を決めず、記録を持って相談する材料にしてください。
常備しておくと助かるもの|たまごがゆ

食欲がない日にも作りやすく、体にも入っていきやすい一品として、たまごがゆがあります。やわらかく炊いたごはんに、溶き卵とだしを合わせるだけで、炭水化物とたんぱく質を同時に、しかも噛む負担を抑えて摂れます。

たまごがゆ|食欲が戻らない日でも口にしやすい一品 ※画像はイメージです
★ たまごがゆの作り方(目安)
やわらかめに炊いたごはんに、だし汁をひたひたより少し多めに加えて温める。ふつふつしてきたら溶き卵を回し入れ、半熟になるまで軽く煮る。塩は控えめに、味の物足りなさは梅干しや刻みねぎを少量添えて調整する。
体調のいい日にごはんを多めに炊いて小分け冷凍しておくと、いざというときに手早く作れます。
具体的な分量やもう一品を足すかどうかは、そのときの食欲と血糖の状態によって変わります。普段の献立で悩んだときと同じように、担当の管理栄養士に確認しておくと、シックデイの日にも迷わず動けます。
おわりに
シックデイの食事は、完璧に整えることが目的ではありません。水分を切らさない、炭水化物をゼロにしない、薬は自己判断で止めない。この3つさえ守れれば、あとは体調に合わせて緩めてかまいません。
一人で抱え込んで判断に迷う日こそ、主治医や管理栄養士を頼っていい日です。焦らず、体を休めることを優先しながら、乗り切っていただければと思います。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供で、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。シックデイの対応(服薬の継続・調整、水分・食事の量、受診のタイミング)は、糖尿病の治療内容・合併症の有無・体調によって一人ひとり異なります。自己判断で薬の中止・増減を行わず、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「シックデイ」 | シックデイの定義、安静・水分・服薬管理の基本方針、受診の目安(嘔吐・下痢の持続、高熱、食事摂取不良、意識変容) | 朝/夜までに確認しておきたいこと/こんなときは早めに連絡を |
※基準は改訂で変わることがあります。最新は公式ページを確認してください。

