糖尿病と診断されると、「糖質は悪いもの」という印象を持ちやすくなります。
でも実際には、糖質をゼロにしなければいけない病気ではありません。むしろ、完全カットを試みると食事が極端になって長続きしない、ということが起こりやすいといわれています。
この記事では、「糖質は1日にどれくらい摂っていいの?」「何を気をつければいいの?」という疑問に、管理栄養士の立場から整理してお伝えします。
糖尿病でも糖質は「ゼロ」にしなくていい

糖質(炭水化物)は体や脳のエネルギー源です。不足すると、筋肉が分解されてエネルギーに変わったり、低血糖を起こしたりする危険があります。ご飯を抜いて薬だけ飲み続けると、薬が効きすぎて低血糖になるケースもあります。
「糖質は毒」ではなく、「摂りすぎが問題」というのが正確な見方です。
大切なのは量の調整と食べ方の工夫。完全に断つのではなく、適切な量を1日3食に分けて取ることが、血糖値を安定させる基本です。
極端な糖質制限(1日50〜100g未満が目安の厳しい制限)は短期的な血糖改善に使われることもありますが、腎機能への影響や、長期安全性がまだ十分に確立されていないという課題もあります。自己流での厳しい制限は、必ず主治医・管理栄養士に相談してから行うことが必要です。
1日にどれくらい?糖質量の目安

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(厚生労働省)では、炭水化物の目標量を総エネルギーの50〜65%と設定しています。これは一般成人向けの目標で、糖尿病でも極端に低くする必要はないとされています(主治医の方針や病態によって個別に調整されます)。
たとえば1日の目標エネルギーが1600kcalの方なら、炭水化物は1日200〜260g程度が目安の範囲になります。
ただし、「炭水化物○○g」と毎食計算するのは日常生活では難しいです。主食の量を目安にするのが実用的。1食のご飯量は普通盛り(150g前後)を基準に、多すぎないよう調整することが出発点になります。
詳しい自分の目標エネルギーと炭水化物量は、担当の管理栄養士や主治医に確認してください。体格・活動量・病態によって変わるため、一概には言えません。
糖質と上手につきあう食べ方のコツ

摂る量だけでなく、食べ方でも血糖値の上がり方が変わります。日常生活で取り入れやすいコツを整理しました。
食べる順番を変える
野菜・海藻・きのこ類を先に食べてから主食を食べると、食物繊維が糖の吸収を遅らせてくれます。「ベジファースト」とも呼ばれる方法です。特別な食品を買わなくても、順番を変えるだけで食後血糖値への影響が変わるので、試しやすい工夫のひとつです。
主食の質を少し変える
白米に麦を混ぜたり、玄米や雑穀を加えたりすると、同じ量でも食物繊維が増えて血糖値の上がり方がゆるやかになります。食パンなら全粒粉パンにするのも同じ方向の工夫です。
完全に変える必要はなく、「白米3に対して押し麦1」くらいの混ぜる割合から始められます。
1日3食に分けて食べる
まとめ食いをすると、一度に大量の糖質が入ってくるため血糖値が急激に上がります。朝・昼・夕に分けて、各食の主食量を揃えるのが基本です。
1食抜いて次の食事でたくさん食べる、というのは逆効果。特に朝食を抜くパターンは昼食後の血糖値の急上昇につながりやすいため、少量でも朝食を摂ることをすすめます。
間食の糖質に気をつける
間食がクセになっている方は、その糖質量が積み上がっています。菓子パンや甘い飲み物は糖質が多く、気づかないうちに主食1食分を超えることも。
間食が必要な場合は、低糖質のナッツや無糖ヨーグルトなど、血糖値への影響が少ないものを選ぶのがおすすめです。甘い飲み物は水・お茶・無糖のものに切り替えましょう。
主食と料理の糖質の目安早見

主食の糖質(炭水化物)量をざっと把握しておくと、1食の調整がしやすくなります。

※1食あたりの炭水化物量の目安です。
| 主食 | 目安量 | 炭水化物の目安 |
|---|---|---|
| 白ごはん(小盛り) | 100g | 約37g |
| 白ごはん(普通盛り) | 150g | 約56g |
| 食パン | 6枚切り1枚 | 約28g |
| うどん(かけ) | 1杯 | 約55g |
※同じ食品でも、盛り付け量や調理法によって量は変わります。あくまで目安としてご覧ください。
ご飯の普通盛り(150g)と、うどん1杯では炭水化物量がほぼ同じくらいです。「麺は軽い感じがする」と思いがちですが、量によっては主食の糖質はさほど変わりません。
糖尿病の実例献立から

※画像はイメージです
糖尿病の献立で使われる散らし寿司を例に挙げると、1食分の炭水化物は約84g(エネルギー約401kcal)です。ご飯200g+酢・砂糖が入るため、普通盛りより多くなります。散らし寿司のような行事食・外食は特別な機会に楽しむ位置づけで、日常の主食量とは別に考える目安になります。
炊き合わせなどの副菜は炭水化物が少なく、主に根菜・芋類が入ると少し増える程度。副菜は糖質より食物繊維・ビタミン・ミネラルを補う役割と考えると献立のバランスが取りやすくなります。
低糖質食品・置き換えの使いどころ

最近は低糖質のごはん・麺・パンなどの製品が増えています。使いどころと注意点を整理します。
使えるシーン: 外食や行事などで普段より糖質が多くなりがちなとき、一時的に置き換えて調整する。または、糖質を少し下げたいが食べごたえは落としたくない、という場合に取り入れやすい。
注意したいこと: 低糖質と書かれていても、脂質や添加物が多い製品もあります。食品表示(成分表)を確認して、1食あたりの炭水化物量を確かめるのが確実です。「低糖質だから大量に食べていい」ということにはならないため、量は通常と同じように管理します。
また、特定の食品を食べれば血糖値が改善するという保証はありません。食品選びの工夫は補助的な手段であり、食事全体のバランスと量が基本です。
気をつけたいこと

糖質制限は方法によって低血糖のリスクがあります。とくに注意が必要なのは、インスリン注射やSU薬(スルホニル尿素薬)を使っている方です。薬の量を変えずに急に糖質を減らすと低血糖が起きる危険があります。
以下に当てはまる方は、食事を変える前に必ず主治医に相談してください。
- インスリン注射を使っている
- SU薬(グリメピリド、グリクラジドなど)を服用している
- 腎臓の機能が低下していると言われたことがある
- 体重が急激に落ちている
また、極端な糖質制限(1日の炭水化物を100g以下に抑えるような方法)は、長期的な安全性についてのデータが限られています。短期間の取り組みとして医療の管理下で行うなら話は別ですが、自己流で続けることはすすめられません。
まとめ
「糖質を減らす」ことと「糖質をゼロにする」ことは、まったく違います。
量を守って食べる、食べ方を工夫する、薬との兼ね合いを確認する。この3点が食事療法の核心です。特別な食品に頼る前に、毎食の主食量と食べる順番を見直してみることが、続けやすい第一歩になります。
糖尿病の食事療法は個人差が大きく、体格・活動量・合併症・薬の種類によって最適な内容が変わります。この記事の内容はあくまで一般的な目安として参考にしつつ、具体的な目標量・制限内容は担当の医師・管理栄養士に確認してください。
免責事項・参考基準
本記事は管理栄養士が執筆した一般的な情報提供であり、特定の個人への医療行為や栄養指導の代わりではありません。糖尿病の食事療法は、その方の病態・合併症・治療方針・服薬内容によって大きく変わります。食事の変更や糖質制限の実施前には、必ず主治医および担当管理栄養士の指示を優先してください。
参考にした基準・出典の系統
| 出典系統 | 内容 | 記事内の使用箇所 |
|---|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2025年版)(厚生労働省) | 炭水化物の目標量(50〜65%エネルギー、成人) | 「1日の糖質量の目安」節 |
※食事摂取基準は改訂により変わることがあります。最新情報は厚生労働省公式ページをご確認ください。

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